アストロ・トピックス

No.315: 4D2Uプロジェクト制作の映像作品がシーグラフに入選

 この度、国立天文台4次元デジタル宇宙 (4D2U) プロジェクト制作の映像作
品「渦巻銀河の形成」 (英文タイトル "The Formation of a Spiral 
Galaxy" )が、世界最大のコンピュータ・グラフィックス (以下CG) 映像の祭
典であるシーグラフ (SIGGRAPH) において、エレクトロニック・シアター上映
作品に選出されました。
 本作品は、渦巻銀河の形成過程を再現した大規模なコンピュータ・シミュレ
ーションを可視化したもので、総計1000本に近い応募作品から選ばれた34作品
の一つとして、今年8月上旬に米国サンディエゴで行われる「シーグラフ
2007」会場で上映される予定です。
 シーグラフはアメリカ計算機学会の分科会のひとつであり、CG分野における
最高峰の学会・展示会として、既に30年以上の歴史をもっています。中でも今
回「渦巻銀河の形成」が入選したエレクトロニック・シアターは、シーグラフ
を象徴するイベントの一つとして知られ、世界中からその年を代表するCG作品
を選出して、映画館等の大きなスクリーンで連続上映するものです。シーグラ
フに集まる数万人のCG関係者のみならず、映像業界全体からの注目度も高く、
入選は非常に名誉なこととされています。
 渦巻銀河形成のシミュレーション・データを提供した、国立天文台天文シ
ミュレーションプロジェクト研究員の斎藤貴之 (さいとうたかゆき) さんは、
今回映像化された計算について次のようなコメントを寄せています。
「現在有力視されている宇宙モデルの中では、小さな構造が初期に形成され、
それらが合体して現在我々が知る銀河が形成されてきたと考えられています。
このシミュレーションは、そのような銀河の形成過程を200万個の粒子で表現
し、国立天文台の重力多体問題専用計算機 GRAPE-5 システムを用いて約1年の
時間をかけて行われたものです。シミュレーションによって描き出されたダイ
ナミックで美しい銀河の誕生の様子を、多くの人に楽しんでもらえたらと思い
ます。」
 通常のCGソフトでは処理することができない、膨大な計算データを可視化す
るにあたっては、4D2Uプロジェクトで開発された、数百万体の粒子を任意の視
点で表示する機能をもつ "Zindaiji" (ジンダイジ) というソフトが活躍しま
した。本作品の入選は、最先端のサイエンスと、それを可視化するための技術
開発、美しい映像作品に仕上げるための芸術的感性とが、プロジェクトにおい
て結びついた成果といえます。
 「渦巻銀河の形成」の映像は、本年3月に国立天文台三鷹キャンパスに完成
した「4D2Uドームシアター」の月例公開において、ドーム立体映像としてご覧
いただくことができます。また、今回シーグラフに入選した、英語ナレー
ションと音楽のついたバージョンに関しても、4D2Uプロジェクトのウェブサイ
ト上でのストリーミング配信を予定しています。
 
参照:
 国立天文台4次元デジタル宇宙 (4D2U) プロジェクト
  http://4d2u.nao.ac.jp/
  (上記の "Zindaiji" もこちらからダウンロードできます)

 シーグラフ2007 エレクトロニック・シアター (英語)
  http://www.siggraph.org/s2007/attendees/caf/et.html

2007年7月30日            国立天文台・広報室