アストロ・トピックス
No.294: 日本公開天文台協会が「公開天文台白書2006」を発行
日本国内には、天体観測設備を持ち天体観望会などの公開事業を行っている 公開天文台が400余りあり、世界に類を見ない設置数の多さと言われていま す。その多くは1980年代から1990年代に設置されたものであり、科学館の付属 や野外活動施設に併設されている望遠鏡であったり、研究観測を伴う天文台で あったりと、その目的や運用形態はさまざまです。また、1990年代後半以降 は、口径1メートルを超える望遠鏡の設置が相次ぎ、大型化が顕著になってい ます。 こういった多種多様な公開天文台が、どのような規模で分布し、どんな内容 の公開を行っているか、どういった職員がそれを担っているのか、どの程度の 利用者があるのか、など日本の公開天文台の現状を把握することを目的に、日 本公開天文台協会 (略称:JAPOS) が全国調査を行い、その結果を「公開天文 台白書2006」としてまとめました。 調査は、2006年4月から6月にかけて全国412の公開天文台を対象に行い、62% にあたる256件から回答が寄せられました。設問は、夜間観望会の開催頻度や 宿泊施設の有無など、利用者が必要とする基礎情報をはじめ、利用者数や利用 者層、設置・運営者、職員数やその職種、経費、指定管理者制度導入の有無な ど、運営に深く関わるものまで含む内容になりました。得られた回答は、対象 を設置目的別に分類し分析することで、それぞれに特徴ある結果を得ることが できました。 このような調査は、過去にも兵庫県立西はりま天文台公園を中心に行われた ものがありましたが、1997年以降の調査はなく、この間に市町村合併や指定管 理者制度の導入など、特に地方自治体が設置した公開天文台をとりまく状況は 大きく変化しました。また、これまでの調査結果は、天文台毎に基礎情報を整 理した冊子として発行されていたのみで、今回のような詳細な統計データを掲 載し分析を加えた「白書」としての発行は初めてとなります。 2005年に発足した日本公開天文台協会にとって、「公開天文台白書2006」の 編纂は、最初の大きな事業となりました。「白書」の統計データを読み解くこ とで、日本の公開天文台をとりまく環境や抱える問題点があらわになってきま す。今後は、この「白書」を試金石として、公開天文台の社会的認知、その管 理運営の健全化と資質向上をめざすことになります。人間が太古から抱き続け てきた宇宙への好奇心、それを通じて自然観を養い心豊かな人間性を培う生涯 学習施設のひとつとして、公開天文台が社会の中でどのような役割を担ってい くべきかが、今後の課題となるでしょう。 「公開天文台白書2006」は、日本公開天文台協会のホームページからどなた でも閲覧することができます。 参照: 国立天文台アストロ・トピックス (123) 「日本公開天文台協会」発足 http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000123.html 日本公開天文台協会ホームページ http://www.nhao.go.jp/japos/ ※このアストロ・トピックスは、日本公開天文台協会・公開天文台白書編集 委員会よりご投稿いただきました。 2007年4月26日 国立天文台・広報室