アストロ・トピックス
No.277: 板垣さん、NGC 5584 銀河に超新星を発見
山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんが、3月1日 (世界時、以 下同じ) の観測から、15.4等の超新星を発見しました。この超新星は、おとめ 座方向にある NGC 5584 銀河の中にあり、板垣さんご自身がお持ちの口径60 センチメートルの反射式望遠鏡 (f/5.7) を使い、CCD観測により撮影された多 数の画像の中から発見されました。 この発見は、兵庫県の中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学 連合電報中央局に報告され、超新星は「2007af」と命名されました。 以下は、板垣さんによって発見された超新星の観測値です。 超新星「2007af」が発見された日時と等級と位置 発見日 2007年3月1.84日 = 3月1日20時10分 (世界時) 15.4等 赤 経 14時 22分 21.03秒 赤 緯 -0度 23分 37.6秒 (2000年分点) 超新星「2007af」は NGC 5584 銀河の中心から、西に40秒角、南に22秒角離 れた位置にあります。板垣さんは先月、2月24日 (限界等級が19.0等) と2月25 日 (限界等級18.5等) にも、この銀河の観測をしていましたが、今回の超新星 は写っていませんでした。またDSS画像 (注1) にも同様に写っていませんでし た。 板垣さんは3月2日にもこの超新星の追跡観測を行い、明るさが15.3等になっ ていることを確認しています。また、3月4日に外国の天文台でこの超新星の分 光観測を行った結果、通常のIa型 (注2) 超新星が示すスペクトル線の振る舞 いに非常に良く似ていることが分かりました。また、この銀河には1996年 8月、富山県の青木昌勝 (あおきまさかつ) さんもIc型 (注2) の超新星 「1996aq」を発見しています。 板垣さんは今年に入り、これで3個の超新星を発見したことになります。今 回の超新星の発見により、板垣さんによる超新星の発見数は通算30個 (独立発 見を含む) となりました。日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最 多記録をさらに更新中です。 注1: DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュ エル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オース トラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化 したもの。限界等級は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体ま で写っている。 注2: 超新星は星の一生の最期を飾る大爆発で、ひとつの星がある日突然明る く輝き始め、ひとつの銀河全体に匹敵する程の明るさに達する現象をいう。超 新星が発見されると、その物理的性質を知るために通常分光観測が行われ、そ のスペクトル線の中に水素の線が見られない (または欠乏している) I型と、 水素の線が見られるII型とに観測的に分類される。さらにI型の中でも核融合 反応による爆発をIa型とよび、I型超新星爆発の多くを占める。Ib,Ic型は外側 の水素層を失った星が重力崩壊したものと推測されている。 参照: IAUC No.6454 : SUPERNOVA 1996aq IN NGC 5584 (1996 Aug 20) CBET No. 863 : SUPERNOVA 2007af IN NGC 5584 (2007 Mar 2) CBET No. 865 : SUPERNOVA 2007af IN NGC 5584 (2007 Mar 4) 2007年3月5日 国立天文台・広報室