アストロ・トピックス
No.272: 今が見どころ、明るくなった変光星「ミラ」
長周期変光星の代表的な変光星、ミラ (くじら座ο (オミクロン) 星)(注1) が、今の時期に非常に明るくなっています。変光星 (注2) とは、明るさが変 化する星を言います。ミラは、太陽程度か、それよりも少し大きな質量をもっ た星が、進化の最終段階で力学的に不安定になり、星自身が膨張と収縮を繰り 返すことで、明るさが (準) 周期的に明るくなったり暗くなったり変化する脈 動型変光星のひとつです。この星は、ふだんは暗くて肉眼では見ることができ ませんが、極大期をむかえた今頃の時期の夕方、南西の空で2等星くらいに輝 いており、肉眼でも見られます。通常の極大では、3等にとどまることもあり ますが、今回は2等星台に達しています。 ミラの位置、変光範囲、変光周期、極大日 (予報) の概略値は以下の通り。 但し、変更範囲、周期は変動することが多く、極大予報もずれることがありま す。 赤 経 2時 19分 20.8秒 赤 緯 -2度 58分 40秒 (2000年分点) 変光範囲 2.5等-10.1等 変光周期 332日 極大日 (予報) 2月17日頃 なお、星空でのミラの見つけ方は以下の通りです。 今の時期の午後6時半ころ、西の空に大変明るい惑星である金星が見えま す。また南の空の中くらいの高さには、オレンジ色に輝くおうし座のアルデバ ランという星があります。この2つの明るい星を結んだ線上のほぼ中間に、ミ ラがあります。もし星座早見盤をお持ちでしたら、それをたよりにくじら座を 探して、見つけることもできます。 まだまだ寒い時期ですので、寒さ対策をしっかりして、どうぞご覧下さい。 注1: 変光星ミラは、1596年8月、ファブリチウス (D Fabricius) さんによっ て発見された変光星の第一号です。古来、太陽や星は神聖なものと考えられ、 天上の星ぼしの明るさが変わるなどとは、想像もできなかった時代がありまし た。その当時、この変光する天体が初めて見つかったため、ヘべリウスはこの 星を「不思議な星」(ステラ・ミラ) と名づけました。 これ現在、この星が“ミラ”と呼ばれる由縁です。 注2: 変光星は周期や変光幅の大小、形によって、いくつかの型に分類されま す。星間雲から生まれた星ぼしは、その質量の大小によって、その後の進化の 様子が大きくかわります。ミラは大きく広がった大気をもっており、恒星干渉 計の観測によると、太陽をまわる地球軌道を飲み込むほど、その直径が大きい ことがわかっています。しかし、ミラなどの長周期脈動型変光星の変光機構は まだ完全には解明されていません。 参照: 佐藤英男 長周期変光星:ミラ 天文月報 第86巻 第5号 232,233(1993年5 月) 「星空でのミラの位置」国立天文台 2007年2月20日 国立天文台・広報室