アストロ・トピックス

No.227: 銀河の誕生を彩る巨大ガス天体と宇宙初期の大規模構造

 東北大学、国立天文台、京都大学を中心とする研究チームは、すばる望遠鏡
を使って約120億光年彼方の宇宙に、銀河の大規模構造を発見し、さらにこの
構造に沿って、非常に大きくて重い「巨大ガス天体」の存在を多数確認しまし
た。

 研究グループは、手前や背後にある銀河と区別して、約120億光年彼方にある
銀河のみを拾い出すために、ある特定の波長の光のみを通す特別なフィルター
を開発しました。それを、すばる望遠鏡主焦点カメラに取りつけ、銀河が密集
していることが知られていた、約120億光年遠方のある領域の周辺を、これまで
にない広さで観測しました。その結果、これまで知られていた密集領域は、そ
の数倍以上に広がるより大きな「大規模構造」の一部にすぎなかったことがわ
かりました。この「大規模構造」は、差し渡しが2億光年にも及び、近くの宇宙
で見つかっている最も大規模な構造、超銀河団 (1億光年程度) 以上の大きさに
広がっていることがわかったのです。

 さらに、この大規模構造の中に、我々の銀河系よりもはるかに大きな「巨大
ガス天体」を数多く発見しました。その後、これら巨大ガス天体を、分光観測
したところ、質量の非常に大きな重い天体であることが判明しました。現在の
銀河形成理論によれば、質量の小さな銀河が合体して質量の大きな銀河が形成
されると考えられており、昔の宇宙(120億光年彼方の銀河の観測は、120億年前
の銀河の姿を見ることに相当)では、大質量銀河がこれだけ数多く、大規模に
集まって存在することは難しいだろうと予想されていました。今回の発見は、
大質量銀河の形成、密集が、理論予想よりはるかに早い段階で生じていること
を示し、現在主流の銀河形成の理論研究に強い制限を与える、非常に重要な観
測成果であると考えられます。

参照:銀河の誕生を彩る巨大ガス天体と宇宙初期の大規模構造
   http://subarutelescope.org/Pressrelease/2006/07/26/j_index.html
   すばる望遠鏡 http://subarutelescope.org/j_index.html


        2006年7月31日            国立天文台・広報室