自然科学研究機構 国立天文台

No.219: すばる、バナナの形をした原始惑星系円盤を新発見 ~多波長赤外線でみる惑星誕生の現場~

 名古屋大学、東京大学、国立天文台/総研大、宇宙航空研究開発機構、神戸大学、
茨城大学の研究者たちからなる2つのチームが、すばる望遠鏡を用いてHD 142527
と呼ばれる若い星を撮影し、バナナ状の弧が向かい合った形をした原始惑星系
円盤を発見しました。バナナのような形をした原始惑星系円盤の発見は初めて
のことです。さらにこの円盤には、内側と外側を隔てる「すきま」があること
も明らかになりました。このすきまは、すでに誕生した惑星によって作られた
可能性もあります。

 惑星が生まれる現場であると考えられているのが、「原始惑星系円盤」と呼
ばれる、若い星を取りまくガスと塵でできた円盤です。この円盤の中で塵が成
長して微惑星が形成され、微惑星どうしの合体衝突などによって惑星が誕生す
ると考えられています。つまり、惑星がどのように形成されるのかを理解する
には、若い星の円盤を調べることが重要になります。

 研究チームは、約650光年の距離にあるHD 142527と呼ばれる年齢約100万年の
若い星を、すばる望遠鏡に搭載された近赤外線の観測装置、CIAOを用いて観測
しました。その結果、この星の周りの円盤の姿をとらえることに初めて成功し
ました。そして驚くべきことに、半径約500天文単位の円盤は、バナナ状の構造
が2つ向き合った形をしていることが分かりました。

 研究チームは、円盤の内側に別の天体が存在し、それが重力的に円盤に影響を
及ぼしていることが原因ではないかと解釈しています。また、円盤の一部から
外側に円弧状にうすく伸びる「角」のような構造も検出されました。これは他
の恒星との接近遭遇のような歴史を反映していると思われます。以前に見つか
ったドーナツ型やうずまき状の円盤などと併せると、惑星誕生の場である原始
惑星系円盤がさまざまな形をとりうることが明らかになってきました。

 さらに、近赤外線での発見を受けて、同じくすばる望遠鏡に搭載されたCOMICS
でより波長の長い中間赤外線でも観測されました。その結果、近赤外線での観
測では見えにくかった、円盤の中心部分の様子も明らかになりました。バナナ
状の広がった円盤に加えて、星の近傍に比較的コンパクトな円盤があり、この
2つの円盤の間には物質が存在しない「すきま」領域があることが明らかになっ
たのです。このすきまは、円盤の中ですでに惑星が誕生しており、その惑星が
軌道に沿って円盤物質を蹴散らしたために作られた可能性もあります。また、
円盤中の塵の性質が導き出され、塵が円盤中ですでに少しずつ成長を始めてい
ることが確認されました。「塵から微惑星へ、微惑星から惑星へ」という惑星
誕生に至る長い道のりの一コマを、目の当たりにできたわけです。

 これらは、近赤外線から中間赤外線にかけての4波長の連携的観測によって、
鮮明に円盤の姿をとらえ、宇宙に存在する円盤の立体的な構造やその中にある
塵の性質を知ることができた貴重な観測成果です。今後は、円盤のすきまの原
因と思われる惑星の直接検出にトライするとともに、他の円盤の撮像観測例を
増やしていくことで原始惑星系円盤の普遍的な要素と多様性を切り分け、さら
に、多様性を作り出す原因を調べる研究を進めていきたいと研究チームは
張り切っています。

 この観測成果は、2006年1月10日号および6月20日号のアストロフィジカルジ
ャーナル誌に掲載されました。


参照:
Fukagawa  et al. 2006, Astrophysical Journal, 636, 153 (10 Jan. 2006)
Fujiwara  et al. 2006, Astrophysical Journal, 644, 133 (20 Jun. 2006)

すばる望遠鏡 「すばる、新しい形の円盤を発見 ~多波長赤外線でみる惑星
誕生現場の姿~」
http://subarutelescope.org/Pressrelease/2006/06/27/j_index.html

      2006年7月6日                  国立天文台・広報室

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