自然科学研究機構 国立天文台

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No.213: ガンマ線バーストによって解明された初期宇宙の様子

 京都大学、東京工業大学、国立天文台の研究者からなるチームは、宇宙の遠方
で起きる大爆発現象であるガンマ線バーストのすばる望遠鏡による観測データか
ら、初期の宇宙の様子を垣間見ることに成功しました。

 ビッグバン直後の宇宙では、水素原子核と電子がバラバラになっています。
これを電離した状態と呼んでいますが、宇宙が膨張するに従って温度が下がる
につれ、原子核と電子が再び結合し、中性の水素原子となっていきました。と
ころが、現在の宇宙では、再び電離した状態にあることが知られています。こ
の宇宙の「再電離」がいつ、どのように起きたのか、は現代宇宙論の謎の一つ
です。電離にはエネルギーが必要で、宇宙に最初に現れた天体からのエネルギー
が源になったという説もあります。再電離の研究から、宇宙初期の歴史の重要
な情報が得られると期待されています。

クエーサーの観測から、誕生後10億年頃が再電離の時代であり、誕生後9億年
頃は宇宙は中性なのではないかと言われてきました。しかし、そのあたりにな
ると、従来の方法では正確な測定はできませんでした。

 そこでガンマ線バーストが注目されていました。ガンマ線バーストは、超新星
のように、太陽よりずっと重い星が終末に迎える重力崩壊によって引き起こされ
る宇宙最大の爆発現象です。爆発時は極めて明るく輝くため、非常な遠方すなわ
ち初期の宇宙においても、発生すれば観測可能です。ガンマ線の輝きが地球に到
達するまでの間の宇宙空間の様子を、いわば”透かして見る”ことができるわけ
です。

 問題のガンマ線バーストは、昨年9月4日に発生しました。すばる望遠鏡の観
測により、宇宙誕生後9億年という、これまでで最も遠く、宇宙誕生後10億年
の壁を初めて破ったガンマ線バーストとなりました(アストロ・トピックス 
(139))。京都大学の戸谷友則助教授らの研究グループは、このガンマ線バー
ストから具体的な宇宙初期の情報を引き出すため、詳細なデータ解析と理論的
検討を進めました。そして誕生後9億年で、宇宙はすでに電離していることを
突きとめたのです。これは今までクエーサーにより情報が得られていた時代を
さらに1億年も遡るもので、宇宙初期の天体の形成がクエーサーから示唆され
ていたよりも早くから進んでいたことを意味します。ガンマ線バーストを利用
した初期宇宙の研究の可能性を示す貴重な成果です。

 戸谷助教授は「世界的な激しい競争の中、発見からデータ解析、初期宇宙の情
報の導出にいたるまで、すべて純粋に日本のチームによって行われたことで、日
本の天文学の存在感を世界に大きくアピールできたと考えている。今後も、さら
に多くの遠方のガンマ線バーストを捉えることで、より詳しい宇宙再電離の過程
を解明していきたい」と意気込みを語っています。

 この成果は日本天文学会欧文報告6月25日号に掲載される予定です。


参照: Totani, T.  et al.  "Implications for the Cosmic Reionization from 
      the Optical Afterglow Spectrum of the Gamma-Ray Burst 050904 at z = 6.3",
   日本天文学会欧文報告誌, 第58巻, 第3号 (June 25, 2006)

   京都大学理学部 戸谷助教授ページ
   http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/~totani/GRB050904-pub/


        2006年5月19日            国立天文台・広報室

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国立天文台 アストロ・トピックスは、2010年6月まで発行していたメールニュースです。2010年7月からは、「国立天文台 メールニュース」として装いも新たにし、注目いただきたいトピックスの主要な内容とその詳細情報の参照先をお届けしています。

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