アストロ・トピックス

No.162: 冥王星にふたつの新衛星?

 ハッブル宇宙望遠鏡によって、冥王星のまわりにふたつの新しい衛星候補が
発見されました。

 太陽系の外縁部であるエッジワース・カイパー・ベルトには、すでに1000個
に迫る勢いで新しい天体が発見されつつあります。冥王星が存在するような太
陽から遠方の領域では、惑星へと成長する速度が遅いため、惑星の材料物質が
吹き払われた時点でも、大きな惑星ができなかったと考えられています。惑星
への成長過程で多数残されてしまったのが、これらエッジワース・カイパー・
ベルト天体群です。

 その衝突過程を示す証拠ともいえるのが、これらの天体群の中に衛星を持っ
ている率が多いという事実です。相互衝突によって惑星がどんどん集積してい
くわけですが、なかには衝突の過程で相互に周囲を回る軌道となり、衛星となっ
てしまうケースも考えられるのです。冥王星には1978年に衛星カロン(Charon)
が発見されました。その後、他のエッジワース・カイパー・ベルト天体にも衛
星が続々と見つかっています。しかし、これまで衛星が複数個発見された天体
はありませんでした。


 ハッブル宇宙望遠鏡が、今年の5月15日と18日に冥王星を撮影したところ、冥
王星からの距離が約4万3000キロメートルのところに、ふたつの天体が発見され
ました。この距離は、これまで知られていた衛星カロンと冥王星の距離の2から
3倍に相当します。しかも、これらのふたつの天体は、まるで冥王星を周回して
いるように動いていたのです。これらの候補天体は、いまのところ S/2005 P1 
および S/2005 P2 と符号が与えられました。今回の観測結果を受け、これらの
候補天体が本当に衛星なのかどうかを確かめるために、来年2月に再びハッブル
宇宙望遠鏡を向け、観測する予定となっています。

 これらの二つの新衛星候補が追観測で確認されれば、複数個の衛星を持つは
じめてのエッジワース・カイパー・ベルト天体の例となり、冥王星の成長や衛
星の起源を考える上で重要な情報を与えるに違いありません。なお、新しい衛
星の名前は確認後に国際天文学連合で議論される予定です。

参照:IAUC 8625 (Oct. 31 2005).
   NASA Press Release PR-05-351 http://hubblesite.org/news/2005/19

      2005年11月3日              国立天文台・広報室