アストロ・トピックス
No.155: 銀河宇宙への足掛かり -- NGC2403
すばる望遠鏡の主焦点カメラ Suprime-Cam が渦巻銀河 NGC2403をとらえ ました。銀河の全体について、これほど鮮明な画像を得られたのは今回が初 めてのことです。地球から約1000万光年という比較的近傍にある NGC2403 は、渦の巻き方が比較的緩い Sc型 と呼ばれる銀河です。 私たちの銀河系 (天の川銀河)の半分ほどの重さを持ち、内部には多量の中性水素ガスをもつ ことが知られています。渦巻き腕には、活発に星生成を行う赤色の領域 (HII領域) や青色の若い星の群 (OB アソシエーション)、ダストによって 星の光が隠されている暗黒帯が見られます。 NGC2403は天文学の歴史上、重要な役割を果たしてきました。古くはエド ウィン・ハッブルが提唱した「遠くの銀河ほど速い速度で我々から遠ざかっ ている」という宇宙膨張則 (ハッブルの法則) の根拠となる銀河の一つです。 また「渦巻き銀河の回転速度と絶対光度 (*) の間に一定の関係がある」と したタリー・フィッシャー関係を導いた10個の銀河の一つでもあります。 NGC2403 は、私たちが宇宙の広がりを認識していく中で、銀河の距離決定の 基礎となった重要な銀河といえます。 大きく立派な銀河は、小さな矮小銀河などが衝突合体を繰り返して成長し たと考えられています。この画像に写る星の色と等級を調べることにより、 銀河のハロー (銀河の周囲を球状にとりまく物質) 内に残る衝突合体の痕跡 を検出しようという試みが現在進められているところです。 (*) 絶対光度:天体を 32.6光年 (=10パーセク) の距離に置いたときの光 度のこと 参照:すばる望遠鏡ホームページ http://subarutelescope.org/j_index.html 2005年10月14日 国立天文台・広報室