アストロ・トピックス
No.110: 地球型の系外惑星、発見か?
惑星ハンターは、ついに“地球型の系外惑星”の発見に近づいてきたようで す。 6月13日、カリフォルニア・カーネギー惑星探査チームは、今まででもっとも 軽い惑星を発見したと発表しました。この星の質量の推定値は、地球の5.9~ 7.5倍程度で、これまでの記録のおよそ半分の値です。 1995年以来、太陽系以外の恒星のまわりで、150個以上の惑星が発見されてき ました。太陽系以外の惑星という意味で、これらは系外惑星と呼ばれています。 これまで発見された系外惑星は、観測の性質上、木星よりも重いものがほとん どです。発見の手法がドップラー法によるものがほとんどだからです。この手 法は惑星の公転によって主星が揺さぶられるドップラー効果の量と、その周期 を検出するもので、惑星の質量が大きいほど発見しやすいという特徴がありま す。岩石質の軽い惑星(地球型惑星)は軽いためなかなか発見されにくい状況で した。これまでで最も軽い系外惑星は、昨年の8月にヨーロッパ南天天文台が発 表した地球の14倍程度の惑星でした(国立天文台アストロ・トピックス(44))。 ただ、この重さだと、太陽系では天王星ほどの重さに相当し、必ずしも地球型 と断定することはできません。 今回見つかった系外惑星は、地球からみずがめ座の方向に約15光年ほど離れ た、グリーズ(Gliese)876という恒星のまわりを約1.94日でまわっているもので す。この恒星は質量が太陽の三分の一ほどの、小さくて赤い、ごくありふれた タイプの星です。もともと、この星のまわりには、今回発表された惑星のほか に、公転周期が約30日と約60日の二つの木星サイズの大きな惑星を持つことが 知られていました。その観測データをさらに詳しく解析した結果、研究チーム はどうやら三つ目の惑星があるらしいことに気づきました。理論モデルによる 検証と、ハワイ州にあるケック望遠鏡に搭載されている高分散分光器(HIRES)に よる観測データが、今回の発見の決め手になりました。 特筆すべきは、この惑星が地球と同じように岩石でできている可能性が高い ことです。しかし、中心星からたった300万キロメートル、つまり私たちの太陽 と水星の距離の十分の一の距離の場所を公転しているために、表面の温度は摂 氏200度から摂氏400度に達していると予想されます。残念ながら、この惑星に は生命の誕生は望み薄といえるでしょう。今回の発見は、アメリカの国立科学 財団の記者会見で報告されました。 この研究チームは引き続き、グリーズ876の観測を続けると同時に、新たな地 球型惑星の発見も目指しているようです。近い将来、本当に地球くらいの大き さの惑星が発見されるかもしれません。 参照:アメリカ国立科学財団(NSF)プレス・リリース NSF-PR 05-097. ケック天文台プレス・リリース Keck Finds Most Earth-Like Planet Yet Found Outside the Solar System. http://www2.keck.hawaii.edu/news/science/gl876/050613.html カリフォルニア カーネギー惑星探査プレス・リリース http://exoplanets.org/ 2005年6月15日 国立天文台・広報普及室