アストロ・トピックス
No.073: 今も続く、スマトラ島西方沖地震による地球自由振動
国立天文台 水沢観測所(岩手県水沢市)は、2004年12月26日に起きたスマトラ 島西方沖地震によって発生した地球全体の振動が、現在もなお続いているとい う事実を観測しました。 振動の主な周期は約20分で、地震発生から16日を経過した2005年1月11日現在、 顕著に揺れ続いており、スマトラ島西方沖地震がいかに巨大であったかを物語っ ています。 水沢観測所の佐藤忠弘(さとうただひろ)教授らの研究グループは、超高感度 重力計(超伝導現象を活用した超伝導重力計)を岩手県江刺市の地球潮汐観測施 設およびオーストラリア・キャンベラ市郊外ストロムロ山、北極スバルバード 諸島ニーオルセンに設置して24時間観測を行っています。 今回観測を解析したのは、地球潮汐観測施設とストロムロ山の重力計による、 スマトラ島西方沖地震発生後の観測データです。マグニチュード(M)8クラス(例 えば、2001年6月23日に発生したペルー南部沖地震; M7.9)の10倍以上の振幅で 低周波自由振動が励起(通常よりも活発になっていること)されていることを観 測しました。 さらに、スマトラ島西方沖地震では、地球の膨張収縮が、かつて観測されて いない長期間にわたって観測されています。現在も地面の上下動に換算すると 約0.03ミリメートルの大きさで振動し続けていることを確認しました。 これまでのデータの解析から判断して、この振動は、少なくとも、後1~2ヶ 月間は継続されると思われています。 この観測結果は、地球内部の様子を精密に推定するために重要な資料となり ます。同様の観測は東京大学海洋研究所松代観測点(長野県)、東京大学宇宙線 研究所カミオカンデ観測点(岐阜県)、極地研究所南極昭和基地でも行われてお り、これらのデータも合わせて解析を行うことで、いまだに謎となっている地 球深部の構造について、有力な情報が得られるだろうと期待されています。 参照:国立天文台 水沢観測所 http://www.miz.nao.ac.jp/mizhome.html 2005年1月14日 国立天文台・広報普及室