アストロ・トピックス
No.045: ホイップル博士の訃報
20世紀の偉大な天文学者の一人であるフレッド・ホイップル(Fred Whipple) 博士が、8月30日に97歳の生涯を閉じました。 ホイップル博士は、1950年代に、彗星核が塵(ちり)の混じった氷からできて いるという『汚れた雪玉』モデルを発表し、彗星核の正体の議論に終止符を打 ちました。1950年と1951年に、ホイップル博士が書いた雪玉モデルの論文は、 雪玉の概念だけでなく、雪玉からの水の蒸発によって彗星核の軌道が変化する 「非重力効果」の謎を解決し、当時知られていたエンケ彗星の軌道のずれを定 量的に説明することに成功したのです。これらの論文は、2003年の天体物理学 雑誌(Astrophysical Journal) の調査によると、50年間で最も引用された研究 論文となりました。 その後も自ら観測を精力的に行い、6個の新彗星を発見し、その生涯を彗星や 流星といった太陽系天体の研究に捧げました。1960年代には、スミソニアン天 文台の観測所として、アリゾナ州のホプキンス山を選定し、複数の鏡を合成し たマルチミラー望遠鏡の建設をアリゾナ大学と共にリードし、現在ではホイッ プル天文台(Fred Lawrence Whipple Observatory)と呼ばれています。 謹んでご冥福をお祈りします。 参照:ハーバード・スミソニアン天体物理学研究センター プレスリリース http://cfa-www.harvard.edu/press/pr0428.html 2004年9月2日 国立天文台・広報普及室