アストロ・トピックス
No.043: SOLAR-B 衛星搭載可視光磁場望遠鏡の完成
宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究本部(ISAS)は、国立天文台などと 協力して、第22号科学衛星 SOLAR-B の開発を行っています。SOLAR-B(2005年打 ち上げ予定)は、大きな成果を上げた「ようこう」に続く日本の3番目の太陽観 測衛星で、日米英の国際協力により開発された可視光磁場望遠鏡(以下可視光望 遠鏡と略記)、X線望遠鏡、極端紫外線撮像分光装置の3つの最先端の望遠鏡によ り、約6千度の光球から数百万度のコロナにいたるまでの磁場・温度・プラズマ の流れを観測しようとしています。 このうち、可視光望遠鏡は、地上望遠鏡をはるかにしのぐ0.2秒角(高度500キ ロメートルの地球周回軌道から地上の50センチメートルの大きさのものを見分 けられる性能)という非常に高い角度分解能で、1日24時間連続して太陽の磁場 の画像を取得できる観測装置であり、これまで世界で打ち上げられた太陽観測 のための軌道望遠鏡としては最も分解能が高いものです。 この装置と他の2台の望遠鏡により、太陽ななぜ強い磁場を持つのか、コロナ がなぜ数百万度に加熱されているのか、太陽の総放射エネルギーの変動と地球 環境への影響などが、解明されるのではないかと期待されています。 可視光望遠鏡は日本とアメリカとの国際協力により2000年度より開発を行っ てきました。望遠鏡部を国立天文台が、焦点面検出器を米国航空宇宙局(NASA) のコントラクターであるロッキードマーチン社が、それぞれ開発チームの中心 となって、分担して製作にあたってきたものです。このたび、国立天文台にお いて最終の試験調整がほぼ完了し、「回折限界性能(望遠鏡の解像度が理論的に 達成できる限界)」の0.2秒角を達成しました。 可視光望遠鏡は、我が国の先端的宇宙光学技術を駆使することにより、はじ めて世界に先駆けて実現しました。これらの技術には、高性能複合材料を活用 した望遠鏡構造、軽量で高精度の主鏡、衛星のゆれによる像ぶれを高精度で補 償する可動鏡システム、太陽光線の熱を効率よく排出する熱システム、宇宙望 遠鏡の性能を保障するための地上試験、高度の宇宙望遠鏡システムインテグレー ション技術などがあります。可視光望遠鏡の完成は、我国の高度な宇宙開発の レベルを示すものであり、今後の日本の宇宙開発のあらたな発展の契機となる ものとして期待されます。 ※システムインテグレーション技術: 重量・電力・大きさといった衛星搭載装置特有の厳しい制約のなかで、要 求性能を満たす装置を開発すること。 参照:国立天文台 SOLAR-B 推進室 http://solar.nro.nao.ac.jp/solar-b/ 宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部 SOLAR-B http://www.isas.ac.jp/j/enterp/missions/solar-b/index.shtml 2004年8月27日 国立天文台・広報普及室