アストロ・トピックス
No.020: 電波ヘリオグラフが捉えた金星の太陽面通過
金星が太陽を横切る太陽面(日面)通過(経過)現象は、日本では全国的に天候 に恵まれず、観察できなかった人も多かったようで、残念でした。そんな中、 天候に関係なく、この現象を見事に捉えた観測装置があります。国立天文台野 辺山太陽電波観測所の電波ヘリオグラフです。 電波ヘリオグラフとは、太陽観測専用の電波望遠鏡群で、ヘリオは太陽を、 グラフは撮像装置を意味しています。直径80センチメートルのパラボラアンテ ナ84基からなり、東西490メートル、南北220メートルのT字型の線上に配置され ています。1992年に完成し、その後、毎日太陽で起こる爆発現象などを電波で 監視を続けています。太陽表面の電波の強さを、明るさの分布すなわち電波写 真として捉えることができ、空間分解能は34ギガヘルツの電波で5秒角、時間分 解能も0.1秒から1秒と、この種の装置としては世界最高を誇っています。連続 して高速に撮影することができるので、ビデオ装置に似たイメージの方が適切 かもしれません。主な太陽電波画像はウェブで公開され、学校・大学・社会人 の教育機関での教育にも使われています。 今回の金星の太陽面通過でも、電波ヘリオグラフは悪天候に泣くことなく、 見事に太陽面を横切っていく金星を捉えることに成功しました。すでに動画の ムービーも作成され、公開されています(この画像は17ギガヘルツの電波による 10秒角のものです)。金星の太陽面通過が電波で捉えられたのは史上初めてのこ とですので、歴史的な成果といえます。 今回の金星の太陽面通過は日本から観測できるのは、太陽面通過の前半だけ でしたが、8年後の2012年6月6日には全過程が記録されることでしょう。 参照:国立天文台 野辺山太陽電波観測所 電波へリオグラフが捉えた金星の太陽面通過 http://solar.nro.nao.ac.jp/venus_transit.htm 国立天文台 金星の太陽面通過の情報 http://www.nao.ac.jp/pio/v20040608/ 2004年6月8日 国立天文台・広報普及室