自然科学研究機構 国立天文台

第27回 科学記者のための天文学レクチャー
市民が銀河の謎に挑戦 GALAXY CRUISE

お知らせ

国立天文台は、ふだんは多忙な第一線の科学記者・メディアの方々に、天文学の最前線の話題をじっくり聴いていただくための企画として「科学記者のための天文学レクチャー」を開催しています。今回は、市民が銀河の研究に参加する「市民天文学」プロジェクト GALAXY CRUISEをテーマに取り上げます。

開催概要

開催日時
2020年12月15日(火曜日)午後1時から午後3時
開催方法
オンライン開催(Zoomミーティングを利用)
参加方法
事前登録が必要です
その他
レクチャーの中で、銀河の分類を実際に体験していただくプログラムを設けています。ご関心のある方は、GALAXY CRUISE の事前トレーニングとユーザー登録を済ませた上でご参加ください。

趣旨

GALAXY CRUISE(ギャラクシー・クルーズ)は、研究者と市民が一緒に科学活動を行う「市民天文学」(注)プロジェクトです。すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)が捉えた広大な宇宙画像には、沢山の銀河が写りこんでおり、その銀河の分類に市民が参加します。

銀河がどのように形成され成長(進化)したのか、宇宙にはなぜ多様な形の銀河があるのかは、まだ解明されていない天文学の大きな謎のひとつです。その鍵を握るのが銀河の衝突・合体です。GALAXY CRUISEでは、すばる望遠鏡が捉えた衝突・合体する銀河を「市民天文学者」が見つけ、その特徴を分類します。

GALAXY CRUISEは、2019年11月に日本語サイトを、2020年2月に英語サイトを公開しました。2020年11月1日の時点で、77の国と地域の5124名が「市民天文学者」として登録していて、銀河分類総件数は86万回を超えます。

レクチャーでは、すばる望遠鏡HSCによる世界最高品質のビッグデータに市民が手軽にアクセスし研究に参加するために凝らした工夫と、GALAXY CRUISEの進捗状況について解説します。

(注)Citizen Science(シチズンサイエンス)の日本語名称として、国立天文台が独自に考案した呼び方。 本文に戻る

プログラム

13:00-13:05
開会挨拶
山岡均(国立天文台天文情報センター 准教授・広報室長)
13:05-13:30
【科学目標】 すばる望遠鏡で解き明かす衝突・合体銀河の謎
田中賢幸(国立天文台ハワイ観測所 准教授)
レクチャー資料(18MB)
13:30-13:45
【ビッグデータ】 広大な宇宙画像を俯瞰するhscMap
小池美知太郎(国立天文台ハワイ観測所 特任専門員)
レクチャー資料(34MB)
13:45-14:10
【市民天文学】 GALAXY CRUISEの進捗状況
臼田-佐藤功美子(国立天文台天文情報センター 特任専門員)
レクチャー資料(1.8MB)
14:10-14:25
質疑応答と休憩
14:25-14:45
【体験】 GALAXY CRUISEを使ってみよう
内藤誠一郎(国立天文台天文情報センター 広報普及員)
レクチャー資料(2.5MB)
14:45-15:00
質疑応答
15:00
終了
(プログラム終了後も引き続きオンラインにて質問をお受けします)

レクチャー要旨

【科学目標】 すばる望遠鏡で解き明かす衝突・合体銀河の謎

講師写真:田中賢幸

田中賢幸(たなか まさゆき)
国立天文台ハワイ観測所 准教授

銀河は他の銀河と衝突・合体を繰り返すことで成長すると考えられています。銀河同士の衝突・合体の研究は今まで多くあるものの、その過程で銀河に実際に何が起こるのかについては、いまだ理解が限定的なのが現状です。その理由の一つは、銀河の衝突・合体の痕跡というのは非常に淡いことが多く、観測的に見つけることが困難なためです。現在進行中のHSCを用いたすばる戦略枠プログラム(HSC-SSP)では、空の広大な領域を深く、かつ高い空間分解能で観測しています。HSC-SSPの画像では、これまで見逃されていた衝突・合体の痕跡を捉えることができ、観測的理解が進むと期待されています。しかし、天文学者で全ての銀河を分類することは困難で、多くの市民天文学者の協力が必要です。市民天文学者よる銀河分類結果を使って得られた初期成果と、さらにその分類結果を「教師データ」とした機械学習の見通しについてご説明いたします。

【ビッグデータ】 広大な宇宙画像を俯瞰するhscMap

講師写真:小池美知太郎

小池美知太郎(こいけ みちたろう)
国立天文台ハワイ観測所 特任専門員

前例のない広い空の領域を、複数の波長で観測しているHSC-SSP。この広大な宇宙画像を自在に眺めて回りたいという研究者の要望を実現させたのがhscMapです。ブラウザ上でマウスやトラックパッドを使って、簡単に画像をズームイン・アウトしたり、見られる領域を変えたりできます。星座線やオススメ天体を加えた一般向けバージョンもあります。GALAXY CRUISEの銀河分類サイトは、このhscMapがベースとなっているため、宇宙画像内を巡れます。ビッグデータを扱うための研究ツールをアレンジすることで、市民の皆様が最新の宇宙画像にアクセスし、自在に「宇宙旅行」を楽しむツールになった例をお見せいたします。

【市民天文学】 GALAXY CRUISEの進捗状況

講師写真:臼田-佐藤功美子

臼田-佐藤功美子(うすださとう くみこ)
国立天文台天文情報センター 特任専門員

市民がインターネットを通じて既存の観測データにアクセスし、データ分類に参加する「市民天文学」プロジェクトは、海外で主に英語で先行しています。国立天文台初の本プロジェクトでは、トレーニングメニューを充実させる、「おみやげ」や「出国スタンプ」を集めながら宇宙を巡るといった、海外でのプロジェクトでは見られない工夫を行っています。GALAXY CRUISEの特長や、現在の登録者数や進行状況、さらに登録者の年齢分布などについてご説明いたします。

【体験】 GALAXY CRUISEを使ってみよう

講師写真:内藤誠一郎

内藤誠一郎(ないとう せいいちろう)
国立天文台天文情報センター 広報普及員

GALAXY CRUISEサイトで、市民天文学者たちはどのように銀河を分類していくのでしょうか。銀河分類サイトの機能や操作方法、銀河分類の手順についてご説明します。参加者の皆様にも各自ログインいただき、実際に銀河の分類を体験していただくプログラムです。さらに広大な宇宙画像を巡りながらユニークな天体を探していただくこともできます。皆様からの操作上のご質問に答えながら、インタラクティブに進めてまいります。

※ご関心のある方は、事前に3段階の「トレーニング」を終え、ログイン画面でユーザー登録を済ませておいてください。

参加登録

参加登録は終了しました。

レクチャー資料

当日使用する講演スライド等の内容が、事前に掲載した資料とは一部変更になる場合があります。その点についてはご了承ください。

関連リンク

お問い合わせ先

山岡 均 国立天文台 天文情報センター 広報室長
電話:090-1257-7980(携帯)※ただし、当日正午まで
メール:pro-conf@ml.nao.ac.jp