自然科学研究機構 国立天文台

第26回 科学記者のための天文学レクチャー
TMTが切り拓く宇宙像と計画の現状

国立天文台は、ふだんは多忙な第一線の科学記者・メディアの方々に、天文学の最前線の話題をじっくり聴いていただくための企画として「科学記者のための天文学レクチャー」を開催しています。今回は、超大型望遠鏡TMT(Thirty Meter Telescope)をテーマに取り上げます。

開催概要

開催日時
2020年10月28日(水曜日)午後1時から午後3時30分(予定)
開催方法
オンライン開催
参加方法
10月27日(火曜日)午後5時までに、所定のフォームよりお申し込みください。お申し込みいただいたメールアドレスあてに、後ほどオンライン参加のためのご案内を送付いたします。申し込みへ

趣旨

超大型望遠鏡TMT(Thirty Meter Telescope)は、すばる望遠鏡をはじめとする現在の大型望遠鏡を大きく上回る高い解像度と感度を実現する口径30メートルの超大型の地上望遠鏡です。今後の日本と世界の天文学・宇宙物理学に不可欠な計画として、国際協力で建設計画が進められています。

2030年代の本格稼働に向け、日本の研究者コミュニティでは最新の研究成果を取り入れながらTMTによる科学研究の検討を進めています。特にTMTとすばる望遠鏡との連携で期待される研究の検討結果を、2020年3月に取りまとめました(注)。これを踏まえ、期待される科学研究を3つのテーマで紹介します。

建設計画は、現地の建設工事の遅延により延伸を余儀なくされていますが、日本国内での設計開発は着実に進んでおり、米国国立科学財団の参加に向けた具体的な進展もあります。レクチャーでは、計画の現状についてもご説明いたします。

(注)すばる望遠鏡とTMTが結ぶ新たな宇宙像(サイエンスブック2020) 本文に戻る

プログラム

13:00
開会あいさつ
常田佐久(国立天文台長)
13:05-13:15
概要:TMTの特色と目指す科学研究
青木和光(国立天文台 TMTプロジェクト 准教授)
レクチャー資料(2MB)
13:15-13:45
テーマ1:生命の存在可能性に迫る太陽系外惑星研究
成田憲保(東京大学大学院総合文化研究科附属 先進科学研究機構 教授)
レクチャー資料(39MB)(10月28日更新)
13:45-14:05
テーマ2:天の川銀河にみる初期銀河形成の徹底解明
石垣美歩(国立天文台 ハワイ観測所 助教)
レクチャー資料(9MB)(10月28日更新)
14:05-14:25
テーマ3:物質の起源に迫るマルチメッセンジャー天文学
田中雅臣(東北大学 理学研究科 天文学専攻 准教授)
レクチャー資料(25MB)
14:25-14:45
質疑応答 および 休憩
14:45-15:15
TMT計画の現状と今後
臼田知史(国立天文台 TMTプロジェクト 教授)
レクチャー資料(3MB)
15:15-15:30
質疑応答
15:30
終了
※プログラム終了後も引き続きオンラインにて質問をお受けします

レクチャー要旨

TMTで期待される科学的成果

概要:TMTの特色と目指す科学研究

講師写真:青木和光

青木和光(あおき わこう)
国立天文台 TMTプロジェクト 准教授

TMTは現在の光学赤外線望遠鏡に比べて3倍以上の解像度と、近赤外線では100倍以上の感度を実現する望遠鏡です。この性能を活かし、(1)地球型太陽系外惑星の撮像と分光観測による生命の兆候探査、(2)宇宙の初代星からの光の検出、(3)宇宙膨張の直接測定によるダークエネルギーの性質の解明、を目指しています。また、重力波の検出で急速な進展を見せるマルチメッセンジャー天文学においても、微弱な可視光線・赤外線の測定で大きな役割を果たします。これらの研究課題の概要と今回紹介する研究の位置づけをご説明します。

テーマ1:生命の存在可能性に迫る太陽系外惑星研究

講師写真:成田憲保

成田憲保(なりた のりお)
東京大学 大学院総合文化研究科附属 先進科学研究機構 教授

さまざまな観測手段による太陽系外惑星の検出が急速に進み、地球型惑星をはじめ多様な惑星が存在することが明らかになってきました。とりわけ、太陽系外惑星の大気を観測で捉えることが可能になってきており、その構造や成分の解明が進んでいます。これは太陽系外惑星における生命の存在を探る可能性を切り開くものです。今後、生命の存在可能性をはじめとする太陽系外惑星の研究がいっそう活発化すると期待されるなか、TMTの高解像度・高感度観測は不可欠です。具体的な観測手法を含め、TMTで期待される科学研究を紹介します。

テーマ2:天の川銀河にみる初期銀河形成の徹底解明

講師写真:

石垣美歩(いしがき みほ)
国立天文台 ハワイ観測所 助教

ビッグバン後の最初の星形成以来の宇宙における天体や構造の形成は、さまざまな距離にある銀河の観測によって解き明かされてきました。一方、その形成の歴史は私たちの天の川銀河にも刻まれています。天の川銀河と周辺の小さな銀河(矮(わい)小銀河)の星の研究における近年の目覚ましい進展を受け、これから期待されるすばる望遠鏡の新装置である超広視野多天体分光器PFSによる研究、そしてその先に期待されるTMTによる観測を紹介します。

テーマ3:物質の起源に迫るマルチメッセンジャー天文学

講師写真:田中雅臣

田中雅臣(たなか まさおみ)
東北大学大学院 理学研究科 天文学専攻 准教授

2017年に中性子星というコンパクトな星の合体現象が重力波によって捉えられ、可視光線や赤外線の観測により、この現象が鉄よりも重い元素の重要な起源であることが明らかになりました。宇宙で起こる現象を、重力波やニュートリノ、さまざまな波長の電磁波でとらえる「マルチメッセンジャー天文学」が急速に進んでいます。すばる望遠鏡の広視野観測能力はこれに大きく貢献していくと期待されます。TMTはそこで見い出されてくる天体の詳細な観測を行い、生成される物質を突き止めるのに大きな力を発揮します。

TMT計画の現状と今後

講師写真:臼田知史

臼田知史(うすだ とものり)
国立天文台 TMTプロジェクト 教授

TMT計画は、日本・米国・カナダ・インド・中国の共同で口径30メートルの光学赤外線望遠鏡をハワイに建設するプロジェクトです。現地建設工事が一部住民等の反対を受けて遅延し、計画全体も延伸しておりますが、2019年以来、ハワイでの地元住民との対話や関係者間の協議に取り組むとともに、米国国立科学財団の参加に向けた動きや、各国での設計や開発の進捗もあります。望遠鏡本体と主鏡という、計画の枢要部分を担当している日本の取り組みを含めて、計画の現状と今後の見通しをご説明します。

参加お申し込み

申し込みは終了しました。

レクチャー資料

当日使用する講演スライド等の内容が、事前に掲載した資料とは一部変更になる場合があります。その点についてはご了承ください。

関連リンク

お問い合わせ先

山岡 均 国立天文台 天文情報センター 広報室長
電話:090-1257-7980(携帯)※ただし、当日正午まで
メール:chief-pro@prcml.mtk.nao.ac.jp