No.464: 国立天文台野辺山の45メートル望遠鏡の新受信機を使って110億年前の銀河から電波を受信

 遠い宇宙からやってくる電波信号は大変微弱です。その微弱な電波を受信す
るために、電波天文学者は観測装置の開発や改善を行い、日夜地道な努力を続
けています。国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45メートル望遠鏡には、同観
測所の酒井剛 (さかいたけし) 元研究員 (現東京大学天文学教育研究センター
特任助教)、中島拓 (なかじまたく) 研究員らと大阪府立大学の共同で開発さ
れた受信機システムが新たに搭載され、今年から共同利用観測などに用いられ
ています。この受信機は従来のものに比べて大変性能が高いため、これまで45
メートル望遠鏡では非常に難しかった遠方宇宙の観測などが活発に行われるよ
うになると期待されます。
 この新受信機を用いて、同観測所の伊王野大介 (いおのだいすけ) 助教らは
110億年前の宇宙に存在する Cloverleaf (クローバーリーフ、和訳では四ツ葉
のクローバー、注1) とよばれる銀河を観測し、この銀河に存在する一酸化炭
素分子の放つ電波 (97ギガヘルツ、注2) の検出に成功しました。このような
遠方銀河の観測の場合には、何時間、場合によっては何日もの観測時間を投じ
て一酸化炭素分子探査を行い、運が良ければかろうじて検出に至るのが通例で
した。しかし、この高性能受信機を使うことによって、今回はわずか10分で一
酸化炭素分子の放つ電波スペクトルが検出され、45メートル望遠鏡の飛躍的な
観測性能の向上が顕わになりました。
 この新受信機を使った観測は、現在毎日のように行われており、今後の成果
が大いに期待されます。また、45メートル望遠鏡では、さらに新しい観測装置
の搭載が予定されており、遠方宇宙に存在する Cloverleaf のような銀河の一
酸化炭素分子を探査することによって、銀河の形成や巨大ブラックホールの誕
生の謎に迫っていきます。
 
注1:Cloverleaf は、重力レンズと呼ばれる機構によって明るさが増幅されて
いる。また重力レンズの効果により、1つの銀河が見かけ上4つに分裂 し、四
ツ葉のクローバーのような形を作り出している。
注2:一酸化炭素分子は、星の主な材料である水素分子の分布や存在量とよい
相関を示すため、起こりうる星形成の重要な指標になる。
 
参照:
 国立天文台野辺山の45メートル望遠鏡の新受信機を使って110億年前の銀河
から電波を受信
   国立天文台野辺山
    http://www.nro.nao.ac.jp/~diono/cloverleaf/
 "A New 100-GHz Band Front-End System with a Waveguide-Type 
  Dual-Polarization Sideband-Separating SIS Receiver for the NRO 
  45-m Radio Telescope"
   Nakajima T., Sakai T., Asayama S., Kimura K., Kawamura M., 
   Yonekura Y., Ogawa H., Kuno N., Noguchi T., Tsuboi M., Kawabe R.
, 
   2008, PASJ 60, 435 /p>
 More Images of Cloverleaf Quasar
  The Chandra X-ray Observatory Center (英語)
   http://chandra.harvard.edu/photo/2004/h1413/more.html
 
      2009年4月16日            国立天文台・広報室

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国立天文台 アストロ・トピックスは、2010年6月まで発行していたメールニュースです。2010年7月からは、「国立天文台 メールニュース」として装いも新たにし、注目いただきたいトピックスの主要な内容とその詳細情報の参照先をお届けしています。

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