自然科学研究機構 国立天文台

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No.373: 低速太陽風の吹き出し口での風速が判明

 太陽風は、太陽から絶えず吹き出て太陽系を満たしている超音速の荷電粒子
(陽子、電子などの電気を帯びた粒子) の流れです。その速度は毎秒数百キロ
メートルと非常に高速であり、オーロラや磁気嵐など地球環境に影響を及ぼす
要因の一つとなっています。
 太陽風の存在は、彗星の尾の観測により1950年代から予測されており、その
後、宇宙空間での人工衛星を使った観測で存在が確認されましたが、太陽のど
こからこのような超高速の風が流れてくるか、なぜこんなに高速なのかは長年
の謎でした。
 2006年9月に打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」に搭載されたX線望遠鏡
(XRT) の観測により、コロナホール (注1) に隣接した活動領域 (注2) の端か
ら高温のガスが絶えずコロナ上空に流れ出ている様子が発見されました。この
成果は、昨年12月に発行された米国の科学雑誌「サイエンス」の「ひので」特
集号で発表されました。
 これは、太陽風の吹き出し口、特に比較的低速な太陽風の源を直接観測した
ものである可能性が非常に高いと考えられます。しかし、得られた画像からガ
スの模様が移動していく様子を捉え、そこから高温ガスの速度を予測したにす
ぎず、直接ガスの速度を測定しているわけではありません。そのため、本当に
高温のガス本体が流れているのか、それとも波動現象のように単に模様が動い
ている様子を見ているだけなのか、明らかではありませんでした。
 今回、この問題を解決するために、XRTで発見されたこの高温ガス噴出領域
を「ひので」に搭載された極端紫外線撮像分光装置 (EIS) を使ってさらに観
測しました。EISでは、この高温ガス噴出領域を分光観測することで、ガスが
流れ出している速度を測定することができます。その結果、高温ガスの流出速
度は毎秒100キロメートル程度であることがわかり、XRTを使った観測から予測
された値とほぼ一致する結果となりました。
 「ひので」に搭載されたEIS、XRTの両望遠鏡の観測により、コロナホールに
隣接した活動領域の端から高温のガスが流れ出していることが決定的なものに
なりました。この研究により、今後太陽風の理解が大きく進むことでしょう。

 この研究成果は、米国の天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」
4月1日号に掲載されました。
 注1:X線で観測すると暗い穴があいたようなに見える領域
 注2:黒点など磁場の強い場所の上空にあり、X線で明るく光っているコロナ
の領域
 
参照:
 "Outflows at the Edges of Active Regions: Contribution to Solar Wind
 Formation?"
  Harra L. K., Sakao T., Mandrini C. H., Hara H., Imada, S., Young 
P. R., van Driel-Gesztelyi L., Baker D., 2008, ApJ, 676, L147

 国立天文台 ひので科学プロジェクト
  http://hinode.nao.ac.jp/news/080402EIS_SolWin/

 国立天文台 アストロ・トピックス (357)
  太陽風の源を「ひので」が同定
  http://www.nao.ac.jp/nao_topics/data/000357.html
 
      2008年4月2日            国立天文台・広報室

国立天文台 メールニュース

国立天文台 アストロ・トピックスは、2010年6月まで発行していたメールニュースです。2010年7月からは、「国立天文台 メールニュース」として装いも新たにし、注目いただきたいトピックスの主要な内容とその詳細情報の参照先をお届けしています。

国立天文台 メールニュース