自然科学研究機構 国立天文台

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No.265: 宇宙の暗黒物質の空間分布を初めて測定 ~“ダークマターの中で銀河が育つ”銀河形成論を観測的に検証~


 国立天文台すばる望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡による観測、そして国際的な
研究チームの連係プレーにより、宇宙空間におけるダークマターの空間分布が
世界で初めて明らかになりました。
 1980年代後半、宇宙の中で、たくさんの銀河が泡状の大規模構造を作って分
布していることがわかりました。しかしそれは宇宙大規模構造がどうしてでき
たのか、という大きな謎がもたらされた"発見"だったのです。現在では、銀河
や銀河の作る構造は、宇宙初期に生じた密度の小さな揺らぎ (凹凸) が少しず
つ成長し、130億年余の時間をかけて進化してゆくと考えられています。しか
し、目に見える物質の揺らぎだけでは、構造が成長するまでに時間がかかりす
ぎます。そこで、目には見えないダークマター (暗黒物質) の密度の揺らぎが
大きくなり、その中で銀河の「種」の成長を促すというアイデアが提唱されま
した。ダークマターの存在は、近傍の銀河や銀河団の観測から知られていまし
たが、これが宇宙の大規模構造の形成にも重要な役割を果たしていたという考
え方です。しかし「目に見えない」ダークマターは、実際の宇宙の中で、どの
ように分布しているのか、これまではよくわかっていませんでした。
 ハッブル宇宙望遠鏡のトレジャリー (基幹)・プログラムであるCOSMOSプロ
ジェクト (Cosmic Evolution Survey:宇宙進化サーベイ) では、観測的検証
を行うために、2平方度の視野の天域を高性能サーベイカメラで撮像観測しま
した。0.1秒角の分解能で約50万個の銀河の形態を詳細に調べ、「重力レンズ
効果」と呼ばれる手法を用いて、視野内のダークマターの分布を調べたので
す。目には見えないダークマターも、「質量」は持っています。ある場所に質
量を持つ物質がより集中して分布していると、相対論的効果によって背景の天
体の像にゆがみ (重力レンズ効果) が生じます。この「ゆがみ」の程度によっ
て、そこにどれだけの質量があるのかを推定できるのです。
 一方、国立天文台すばる望遠鏡では、COSMOSプロジェクトに連携する重点プ
ログラムを採択し、主焦点カメラを用いてCOSMOSフィールドの多色撮像観測を
行いました。その結果、解析に用いられた約50万個の銀河の距離を推定するこ
とに成功しました。この結果を、ハッブル宇宙望遠鏡の結果と合わせて解析す
ると、重力レンズ現象を引き起こしているダークマターの距離が推定できま
す。これにより、ダークマターの3次元的な空間分布を世界で初めて明らかに
することができ、ダークマターもまた、大規模構造を形成していることが明ら
かになりました。そして、これを銀河の3次元分布と比較した結果、銀河はま
さにダークマターの作る大規模構造の中に分布していることがわかったので
す。
 このような画期的な研究成果が得られたのは、2平方度という広い視野を、
ハッブル宇宙望遠鏡の高性能サーベイカメラで撮像観測したことと、すばる望
遠鏡による銀河の距離を決める大規模撮像観測の成功という2つの要素がうま
く機能したことによります。今回の研究成果は、2つの偉大な望遠鏡の連携プ
レーが功を奏して得られたという意味で、新しい時代の観測研究の方向性をも
提示したという意義があります。
 この成果は、2007年1月7日の Nature 誌に発表されました。
 
参照:
 すばる望遠鏡ホームページ (日本語)

 COSMOS プロジェクトの公式 WEB (英語)

 「COSMOS 天域のすばる望遠鏡の観測による成果」 国立天文台 すばる望遠
鏡
 
      2007年1月9日            国立天文台・広報室

国立天文台 メールニュース

国立天文台 アストロ・トピックスは、2010年6月まで発行していたメールニュースです。2010年7月からは、「国立天文台 メールニュース」として装いも新たにし、注目いただきたいトピックスの主要な内容とその詳細情報の参照先をお届けしています。

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