自然科学研究機構 国立天文台

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No.257: 多胡さん発見の変光星はマイクロレンズ現象?

  新星を熱心に捜索されている、岡山県津山市にお住いの多胡昭彦(たごあき
ひこ)さんが、カシオペヤ座に奇妙な変光星を発見されました。よく調べてみ
ると、この天体はどうやら、アインシュタインの一般相対性理論を体現した、
重力レンズ現象(マイクロレンズ)を起こしたもののようです。これまでマイク
ロレンズは、プロによる捜索で、暗く遠いものが発見されてきた例はあります
が、これほど明るく、近くにあるものは過去に例がありません。

  多胡さんはデジタルカメラを使って星空の写真を撮影しています。10月下旬、
いつもは11.8等級で写っている星が、次第に明るくなっていくのに気付きまし
た。星の位置は、

  赤経   0時09分22.04秒
  赤緯 +54度39分43.8秒  (2000年分点)

で、カシオペヤ座のW字形の右端にある星(カシオペヤ座β)から南に4.5度ほど
のところにあたります。多胡さんが観測したこの星の明るさ(時刻はすべて世
界時)は、

  10月25.538日   10.7等
      27.409日   10.5等
      30.411日    8.8等
      31.469日    7.5等

で、平常時の11.8等から比べると50倍以上の明るさになったのです。

  これほど星が明るくなるというのは、爆発現象などが起きていることが予想
されます。ところが、イタリアのAsiago天文台や、岡山県の美星天文台などで
撮影されたスペクトルは、へんてつもない白い星のものでした。爆発もしてお
らず、速い自転の兆候も見られません。31日をピークに、次第に星の明るさは
暗くなっていきましたが、その間もスペクトルの特徴は変わりませんでした。

  このような、スペクトルの特徴を変えず、ただ明るさが変動する、という現
象は、星と私たちのほぼ中間くらいの距離で、別の天体が重なったときに起き
ます。中間の星の重力によって光が曲げられ、背後の星が明るく観測されるの
です。マイクロレンズと呼ばれる、この種の現象は、銀河系の中心方向の星や、
大小マゼラン銀河の星をターゲットにしてプロの天文学者による捜索が行なわ
れており、暗い例は数多く発見されてきています。しかし、このように明るい
現象が見つかったのは初めてですし、もちろんアマチュア天文家による発見も
初めてのことです。減光の光度曲線は、マイクロレンズ現象が予言するものに
良く一致しており、レンズの役割を果たした星の距離や質量も計算されつつあ
ります。

  ただ、このような増光現象の場合は常のことですが、発見後は密に観測され
て明るさも良くわかる一方、発見前の情報は非常に手薄です。10月のこの天体
の明るさの記録があれば、光度の変化のようすが、より鮮明に描き出されるため、
10月にカシオペヤ座付近を撮影した写真や画像を集めています。詳しくは、
VSOLJ ニュース (162)をご覧ください。


参考文献: CBET 711 (2006 Oct 31)
	   CBET 712 (2006 Oct 31)
	   CBET 718 (2006 Nov 03)
	   ATEL 931 (2006 Nov 03)
	   ATEL 942 (2006 Nov 12)
	   ATEL 945 (2006 Nov 15)

注:このアストロ・トピックス(257)の原文は、九州大学の山岡均さんから
 投稿していただいたVSOLJ ニュース (162)をもとに、国立天文台・広報室で
 わずかに補訂をしたものです。

       2006年11月17日           国立天文台・広報室

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国立天文台 アストロ・トピックスは、2010年6月まで発行していたメールニュースです。2010年7月からは、「国立天文台 メールニュース」として装いも新たにし、注目いただきたいトピックスの主要な内容とその詳細情報の参照先をお届けしています。

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