自然科学研究機構 国立天文台

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No.158: ショート・ガンマ線バーストの起源

 過去35年にもわたる間、謎に包まれていたガンマ(γ)線バーストの起源が明
らかになってきました。2005年10月6日発行のイギリスの科学雑誌ネイチャーで
は、ガンマ線バーストの一種、ショート・ガンマ線バーストについての研究結
果が報告されています。

 ガンマ線バーストは1960年代にスパイ衛星によって発見された現象です。そ
の後しばらくの間、どんな天体がガンマ線バーストを起こしているのか、どの
くらい離れた場所で起こっている現象なのか、わかりませんでした。距離が測
定されたのは1997年のことです。イタリアとオランダが打ち上げた人工衛星が
観測したガンマ線バーストのアフターグロー(残光)から距離が見積もられまし
た。距離が測定できると、放射されたエネルギー量を概算することができます。
するとそのエネルギーが驚異的に大きな量であることがわかりました。

 それから、多くの観測が行われ、ガンマ線バーストはバーストが2秒以上続く
場合とそれ以下の場合、ふたつの種類に分類されました。前者がロング・ガン
マ線バースト、後者がショート・ガンマ線バーストです。最近の研究から、ロ
ング・ガンマ線バーストは、高速回転している大質量星がブラックホールにな
るときの極超新星爆発によるものとわかりました。大質量星が死を迎えたとき
の断末魔の叫びだったわけです。

 一方のショート・ガンマ線バーストは、平均的なバーストの時間が0.3秒とい
う非常に短時間であり、捕らえることさえほとんど不可能だと考えられてきま
した。しかし、今年5月と7月にふたつのショート・ガンマ線バースト、GRB050509B 
と GRB050709 が見つかり、研究が大きく進歩しました。これらの二つのショー
ト・ガンマ線バーストまでの距離は、それぞれ26億光年と20億光年と推定され
ます。そして、GRB050509B は近傍にある比較的古い銀河である楕円銀河の外側
で見つかりました。その銀河には大質量星が爆発した兆候はなく、観測された
ガンマ線バーストのエネルギーはロング・ガンマ線バーストの1パーセントにも
満たないエネルギー量でした。一方の GBR080709 は星形成している矮小銀河で
起こったようです。他にも見つかっている三つのショート・ガンマ線バースト
がありますが、どれも楕円銀河で起こったバーストと報告されています。つま
り、ショート・ガンマ線バーストは古い星の集団である楕円銀河で起こるとい
う傾向があります。この結果は、ふたつの中性子星もしくは中性子星とブラッ
クホールがお互いの周りをまわりつつ、引きつけ合ってついには合体し、ブラッ
クホールになるときにガンマ線バーストを起こすというモデルの予測と一致し
ていました。

 ショート・ガンマ線バーストの起源には、もう一つの仮説があります。ソフ
トガンマ線リピーターと呼ばれる、非常に磁場が強い中性子星からのフレアー
であるという仮説です。この場合、モデルから予測されるガンマ線バーストの
エネルギー量は、GRB050509 と GRB050709 の場合よりもかなり大きくなります。
したがって、少なくとも GRB050509 と GRB050709 のふたつのショート・ガン
マ線バーストについては、ソフトガンマ線リピーターが起源ではないと言えま
す。

 ロング・ガンマ線バーストでもそうであったように、アフターグローを観測
できるようになったことで、ショート・ガンマ線バーストについての研究は「詳
細」、かつ、「実証的な」研究の段階に達したといえます。これから明らかに
なるであろう謎がいくつかあります。第一に、どうして以前検出されたショー
ト・ガンマ線バーストの場所には今回のような楕円銀河が見えなかったのか、
という謎です。これは、もしかするとショート・ガンマ線バーストに別の起源
があることを示しているのかもしれません。または、銀河が暗すぎて見えなかっ
たのかもしれません。二番目にはアフターグローの謎です。GRB050709 では X
線のアフターグローがガンマ線バーストから二週間後に見つかりました。それ
ほど時間がたってから X線の活動が起こるということは、中心から長い間エネ
ルギーが出ていることになるからです。

 中性子星同士や中性子星とブラックホールの衝突合体現象が実際に起こって
いるらしいという結果が出たことで、重力波を検出できる可能性も高まりまし
た。重力波は、時空のゆがみが伝わる現象でアインシュタインによって予言さ
れましたが、まだ直接検出できていません。中性子星やブラックホールの衝突
合体によって重力波が生まれます。もし、GRB050509B や GRB050709のような現
象がもっと近くで起これば、重力波を検出することができると期待されます。

参照:スイフト衛星ニュースリリース
    http://swift.gsfc.nasa.gov/docs/swift/news/2005/05-334.html
   NASAニュースリリース
    http://www.nasa.gov/mission_pages/swift/bursts/short_burst_oct5.html
   Nature論文
    2005年10月6日号Nature437;P822,P845,P851,P855,P859.

       2005年10月25日            国立天文台・広報室

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国立天文台 アストロ・トピックスは、2010年6月まで発行していたメールニュースです。2010年7月からは、「国立天文台 メールニュース」として装いも新たにし、注目いただきたいトピックスの主要な内容とその詳細情報の参照先をお届けしています。

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