アストロ・トピックス

No.112: すばる望遠鏡、超巨大コアを持つ灼熱惑星を発見

 国立天文台、神戸大、東工大、サンフランシスコ州立大などの研究者からな
る日米合同観測チームは、国際的観測計画(N2Kプロジェクト(注))の一環として、
すばる望遠鏡やケック望遠鏡などによる観測を行ない、ヘルクレス座にある太
陽型の恒星(HD149026)のまわりを2.87日で公転する系外惑星を発見しました。
その後の観測によって、この惑星はいままでに誰も予想していなかった、地球
質量の70倍くらいの巨大な固体(岩石と氷)のコアを持つ、驚愕すべき惑星であ
ることが判明しました。

 現在までに150個を越える系外惑星が発見されていますが、一般にそれらの惑
星の内部構造を知ることは困難です。しかし、惑星が地球からみて恒星面を通
過するような軌道を持っている場合、その通過の様子を観測すると、惑星の直
径や密度、大気の組成や中心核であるコアの質量などが推定できます。

 新たに見つかった惑星は、幸運にも、そのような位置関係にあったため、ア
メリカのアリゾナ州にあるフェアボーン天文台で恒星面を通過する減光が観測
されました。その結果、この惑星は土星より重いのにもかかわらず、その直径
は土星よりひとまわり小さいことがわかりました。つまり密度が高いのです。
計算によれば、この密度を実現するには、惑星がガスだけで出来ているのでは
なく、地球質量の70倍くらいの巨大な固体(岩石と氷)のコアを持つ必要があり
ます。このような惑星はいままで発見されたことがありません。

 「理論家にとって、この惑星の発見は最初に発見された系外惑星であるペガ
スス座51番星以来の重要なものだ。コア質量は理論的には地球質量の30倍が限
界とされていて、木星、土星ではもっと小さい」と、井田茂(いだしげる)・東
工大助教授は述べています。また、この惑星の発見により、木星や土星のよう
なガス惑星の形成理論が明らかになって行くとも期待されています。

 今回のすばる望遠鏡での観測チーム・リーダーである佐藤文衛(さとうぶんえ
い)・国立天文台研究員は、「型破りの系外惑星にはなれてきていたが、それに
してもこんな惑星は想定外だった。我々はこのN2Kプロジェクトでもっともっと
すごい発見をしていくだろう。そのことによって常識が覆されながら、どうやっ
て惑星系ができるのか、どんな多様な惑星系があるのか、太陽系は一般なのか
特殊なのか、というようなことが明らかになっていくと思う」と、その意気込
みを語っています。 

 この研究成果は、アメリカ航空宇宙局(NASA)と国立天文台との共同で発表さ
れ、論文は米国天文学会誌 "Astrophysical Journal" に掲載される予定です。  

参照:B. Sato et al.,  "The N2K Consortium. II. A Transiting 
         Hot Saturn around  HD 149026 with a Large Dense Core"
   すばる望遠鏡 http://subarutelescope.org/j_index.html
   NASA RESEARCHERS DISCOVER PLANET WITH 
          LARGEST SOLID CORE (RELEASE: 05-169; 30 June 2005)
   サンフランシスコ州立大学 
     N2K Consortium Searching the Next 2000 Stars for Hot Jupiters
          http://tauceti.sfsu.edu/n2k/

      2005年7月1日             国立天文台・広報普及室

注:N2Kプロジェクトは、日本、アメリカ、チリの天文学者による系外惑星観測
  計画で、すばる、ケック、マゼランなどの8メートル以上の大口径地上望遠
  鏡を使い、2000個の恒星 (Next 2000(2K))を観測し、数十個以上のホット・
  ジュピター(軌道半径が小さい系外惑星)を発見しようというものです。