自然科学研究機構 国立天文台

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No.097: すばる望遠鏡、最も重元素の少ない星を発見

国立天文台などの研究者からなる研究グループ(注)は、すばる望遠鏡などを
用いた観測により、これまでに知られている中で重元素量が最も少ない星を発
見し、その化学組成を測定することに成功しました。

 この宇宙に存在する鉄のような重元素は、恒星の核融合反応によって生まれ、
その星が一生を終えて超新星爆発などを起こすことで、宇宙にばらまかれます。
ビッグバン直後の宇宙では水素とヘリウム以外の元素はほとんどありませんの
で、宇宙誕生後おそらく数億年の間に生まれた最初の恒星たち、すなわち第一
世代の星たちによって、最初に宇宙に重元素が生まれたわけです。

 ところが、この第一世代の星たちは、太陽のような現在輝いている星とは性
格が全く異なると思われています。重元素がまったくなく、純粋な水素とヘリ
ウムからできていたために大きくなりやすかったとされています。そのため第
一世代の星は、太陽質量の数百倍もあるような超大質量星ではなかったか、と
考えられてきましたが、はっきりした観測的証拠は得られていません。この第
一世代の星がどのようなものであったかを探るのは、天文学の大きなテーマと
なっています。

 これを探る手がかりが、私たちの銀河系の中に生き残っている老齢の星にあ
ります。若い星は世代交代をするたびに重元素が増えていきますが、老齢の星
は宇宙初期に生まれたため、重元素の含有量は少ないはずです。なるべく重元
素量が少ない恒星を探し出し、その元素組成に残された痕跡を探れば、第一世
代の星の特徴、特にその質量を知ることが可能になると期待されています。

 当該研究グループは、鉄組成が既知の恒星の中で最も低い恒星 HE1327-2326 
を発見し、その後、東京大学のマグナム望遠鏡を用いて温度を決定すると共に、
すばる望遠鏡によって詳しい化学組成を測定することに成功しました。その結
果、この星の重元素の代表である鉄の含有量は太陽のわずか25万分の一と、こ
れまで知られている星のなかで最も少ないことが判明しました。また、不思議
なことに炭素がいままで観測されてきた重元素量の少ない星に比べて、際だっ
て高いこともわかりました。この結果の解釈は、これからの課題ですが、いず
れにしろ今回の結果は、第一世代の星による重元素合成の結果を示すもので、
宇宙で最初の星形成プロセスや元素の起源に重要な制限を与える貴重な成果と
いえるでしょう。
 この研究結果は、英国ネイチャー誌4月14日号に掲載されています。

参照:すばる望遠鏡 「すばる望遠鏡、最も重元素の少ない星を発見」
    http://subarutelescope.org/Pressrelease/2005/04/13/j_index.html
   Frebel, A., Aoki, W. et al. "Nucleosynthetic signatures 
    of the first stars", Nature 434, 871 - 873 (14 April 2005).

注: 国立天文台、東京大学、北海道大学、東海大学、オーストラリア国立大学、
  ハンブルグ大学、ミシガン州立大学、ウプサラ大学(スウェーデン)、
  英国放送大学の研究者によるチームです。

      2005年4月14日            国立天文台・広報普及室

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国立天文台 アストロ・トピックスは、2010年6月まで発行していたメールニュースです。2010年7月からは、「国立天文台 メールニュース」として装いも新たにし、注目いただきたいトピックスの主要な内容とその詳細情報の参照先をお届けしています。

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