No.071: すばる望遠鏡、太陽系外縁部の天体表面に結晶の氷を発見

 冥王星を含めた太陽系の外縁部には、1992年以来、数多くの小天体が発見さ
れています。これらはエッジワース・カイパー・ベルト天体と呼ばれ、短周期
彗星の故郷として、あるいは惑星になりきれなかった微惑星の残骸として重要
視されています。しかしながら、これらの小天体は非常に遠方にあるために、
天体の構造や表面の組成を調べるのは、なかなか困難でした。

 そんな中、すばる望遠鏡がまたひとつ成果を上げました。エッジワース・カ
イパー・ベルト天体の一つ、クワーワー((50000) Quaoar)の表面に結晶状態の
氷を発見したのです。クワーワーは、2002年に発見されたエッジワース・カイ
パー・ベルト天体の中では最大級の天体のひとつです(国立天文台・天文ニュー
ス (589))。今回の氷の発見を成し遂げたのは、ハワイ大学のジューイット(David 
Jewitt)とマサチューセッツ工科大学リンカーン研究所のルー(Jane Luu)です。
彼らはすばる望遠鏡の近赤外線カメラ(CISCO)を使って、このクワーワーの赤外
線のスペクトルの観測に成功しました。そのスペクトルに結晶質の氷の存在を
見いだしました。

 エッジワース・カイパー・ベルト領域は、太陽から遠いために、その表面温
度はマイナス220度ときわめて低く、これまでは表面の水は結晶構造を持たない
氷として存在すると思われていました。結晶質の氷はマイナス160度以上になら
ないと形成されないからです。約45億年の太陽系の年齢に比べ、結晶の氷の寿
命は非常に短いことから、クワーワーの表面温度が高くなる、なんらかのメカ
ニズムが今なお続いていることになります。

 ハワイ大学に滞在し、ジューイットと彗星の共同研究をした渡部潤一(わたな
べじゅんいち)国立天文台助教授は「クワーワーの表面に結晶質の氷が存在する
ことは驚きで、その形成メカニズムを考える必要がある。すばる望遠鏡では、
彗星から放出された氷を直接観測するのに成功している(国立天文台 アストロ
・トピックス (4))が、それは結晶質ではない氷だった。その意味で今回の発見
が結晶質であったのは、とても興味深い」と、述べています。いずれにしろ、
今回の発見は、すばる望遠鏡が高い性能を生かした成果であるといえるでしょ
う。

参照:David Jewitt, and Jane Luu, Nature, 2004, 432, 731 (December 9 issue). 
          http://www.ifa.hawaii.edu/faculty/jewitt/quaoar.html

       2005年1月5日            国立天文台・広報普及室

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