自然科学研究機構 国立天文台

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No.062: すばる望遠鏡、若い小惑星の表面に宇宙風化していない証拠を発見か?

 小惑星は、主に火星と木星の軌道の間に存在する岩石質の小天体です。この
小惑星が高い密度で存在する領域を小惑星帯と呼んでいます。軌道が決まって
いる小惑星の数は、今では9万6千個に上っています(2004年10月末現在)。これ
らの小惑星の軌道を詳しく調べていくと、同じような軌道の性質を持つものが
多数見つかることがあります。これらを小惑星の族と呼んでいます。

 小惑星帯では、稀に小惑星同士の衝突が起きることがあります。族の起源の
有力な説のひとつが、この小惑星同士の衝突です。衝突によって生じた破片は、
大きく違った軌道にはならず、みな似たような軌道の性質を持つようになりま
すから、それらが族となるわけです。


 小惑星の族の中で、カリン族というものがあります。最近の軌道の研究から、
カリン族は今から約580万年ほど前に生じた族ではないか、といわれるようにな
り、注目を集めている小惑星の族です。もし、580万年前というのが本当ならば、
それは46億年の太陽系の歴史から考えると、ごく最近になって生まれた族とい
うことになります。そして、族の誕生が小惑星の衝突であれば、その族の中で
は最も大きい小惑星であるカリンは、最大の破片であるはずで、衝突の痕跡が
その表面に残されているはずです。

 カリンをはじめとする小惑星は、一般に遠くて小さいため、探査機を近づけ
ない限りは表面の様子を調べることはできません。しかし、小惑星は自転をし
ますので、自転に伴って太陽の反射光の変化を調べることで、その表面がおお
まかにどのようになっているかがわかるはずです。もし、580万年前に起きた衝
突によってフレッシュな表面が残されていれば、宇宙風化をまだ受けていない
はずですから、赤外線の観測を行うことで確かめられるかもしれません。


 東京大学、国立天文台、ぐんま天文台などのメンバーからなる研究チームは、
カリンの表面の宇宙風化の程度を調べるため、2003年9月にすばる望遠鏡を使っ
て観測を行いました。その結果、自転に伴って、赤外線の反射スペクトルが急
激に変化していることがわかったのです。隕石や宇宙風化の実験結果などと考
え合わせると、これはカリンの表面に、まだ宇宙風化していない領域があるこ
と、つまり最近の衝突によってまだ風化していない内部が表面にあらわれてい
ることを示しています。この結果は、アメリカ・アリゾナ州のバチカン天文台
で行われた独立な観測でも確認されました。

 このように族の中核をなす小惑星の表面に、衝突の痕跡を示唆する証拠が観
測的に得られたのは、非常に珍しいことです。またひとつ、すばる望遠鏡は大
きな成果をあげたといえるでしょう。

参照:Sasaki, T., et al., Astrophysical Journal, 615:L161-L164, 
    2004 November 10.
        "Mature and Fresh Surfaces on the Newborn Asteroid Karin"
   Yoshida, F. et al., Publ. Soc. Astron. Japan., 56, No.6, 
    2004 December (in press).
     "Photometric Observations of a Very Young Family-Member 
                        Asteroid (832) Karin"

      2004年11月10日            国立天文台・広報普及室

国立天文台 メールニュース

国立天文台 アストロ・トピックスは、2010年6月まで発行していたメールニュースです。2010年7月からは、「国立天文台 メールニュース」として装いも新たにし、注目いただきたいトピックスの主要な内容とその詳細情報の参照先をお届けしています。

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