自然科学研究機構 国立天文台

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「彗星の圖」(天文奇現象錦絵集)

貴重書・

「彗星の圖」(天文奇現象錦絵集)

明治の一時期には大衆にわかりやすい錦絵新聞が刷られましたが、これは天文台が所蔵する「天文奇現象錦絵集」の一つで、1882年9月27日の「1882年の大彗星」とそれを驚きながら眺める人々が描かれています。説明文では彗星の大きさや角度を詳しく書き、「外の諸星に異なる事なく」、「吉凶の前兆、豊年の星」といった俗説を「無学の僻説」であると啓蒙する内容となっています。

彗星は他の天体と異なり突如現れたように見えたためか、古くは大変革の前兆とされたり、尾をなびかせる形から「稲星」と名付けられて豊作の兆しとされることもありました。明治に入ってから刷られた「彗星の圖」では打って変わって迷信・俗信をしりぞける内容ですが、裏を返せばそれらが根強く残っており、大衆に科学知識がまだ乏しかったのかもしれません。

2013年11月の末には、アイソン彗星が太陽に最接近します。明るく輝く可能性があるため注目を浴びていますが、多くの天文ファンが心待ちにする様子と、「近代未曾有(めずらしき)の大星」としながらも啓蒙を含む報道をされた「彗星の圖」を比べると、江戸時代の名残から抜け出そうとする明治と純粋に天体ショーを楽しむ平成の間の歴史を感じることができます。