自然科学研究機構 国立天文台

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質問6-1)星までの距離はどうやって測定するの?

まず、測定方法の大まかな説明をしましょう。

  1. 銀河系の中の近くの星までの距離は、三角測量の原理を使って測定することができます。
  2. 距離が分かれば、その星の本当の明るさが分かりますので、星の本当の明るさと色の関係を使うことによって、銀河系の中のもう少し遠い星までの距離が推定できます。
  3. 近くの銀河などの場合には、星の本当の明るさと色の関係に加えて、その銀河の中にある脈動変光星という星を使うことによって距離を推定します。
  4. 遠くの銀河などの場合には、銀河の中にあらわれる超新星を基準の明るさとして使うことで距離を推定することができます。
  5. 非常に遠くの銀河までの距離は、その銀河が遠ざかる速度を使って推定します。

具体的には、以下の方法によって距離を推定することができます。

1. 近くの星までの距離であれば、三角測量の原理を使って測定することができます。

「三角測量」というのは、例えば、渡ることのできない川の向こうにある建物(Aとします)までの距離を、こちら側から測定する方法です。川のこちら側の離れた2点(B、Cとします)から建物の方向を測定すると、角CBAと角BCAの角度がわかりますね。また、BC間の距離はわかるので、建物と測定地点2点の合計3点で三角形の図を描くことができます。正確な縮尺で図を描けば、例えば、図上のAB間の長さと縮尺から、実際のAB間の距離を求めることができます。

太陽系から比較的近い(100光年程度まで)星の場合、三角測量の原理を使って距離を測定することができます。この場合、「川のこちら側の離れた2点」は、夏と冬の地球です。地球は、半径約1億5000万キロメートルの軌道を公転しているので、例えば夏と冬に測定をおこなえば、最大3億キロメートル離れた場所から星の方向を測定することができます。実際に測定するのは「年周視差」とよばれる角度で、これが測定できれば、その星までの距離がわかります。年周視差が小さいほどその恒星が遠くにあることがわかります。

2. 銀河系の中のもっと遠いところにある星までの距離は、星の本当の明るさと色の関係を使って推定します。例えば、太陽のように黄色っぽくて、太陽よりずっと遠くにあるために見かけが暗い星があるとします。色が同じ星は、星の本当の明るさも同じだとすると、この黄色っぽい星も、本当は太陽と同じ明るさだということが分かります。つまり、星の見かけの明るさから、どれだけ遠くにあるのかを推定するのです。

具体的には、「HR図」を用いて距離を推定することができます。HR図というのは、横軸に星の表面温度(色)、縦軸に絶対等級をとったものです。絶対等級というのは、星を32.6光年(光が32.6年間で進むことのできる距離。1光年=約9兆キロメートル)の距離に置いたとしたときの等級に換算したものです。例えば、その星が主系列星(※)の場合、表面温度が分かっている星であれば、HR図から絶対等級を推定することができます。また、観測からは星の見かけの等級が分かります。例えば、太陽の見かけの等級はマイナス27等級ですが、明るさは距離の2乗に反比例するので、32.6光年離れた場所に置いたと仮定すると5等級となり、夜空ではあまり目立たない暗い星となります。
つまり、

  • 明るさは距離の2乗に反比例する
  • 明るさと等級の関係を表した式(ポグソンの式)

以上の2つの関係を使うことによって、距離を推定することができます。

※1主系列星とは、星は星間ガスから生まれ、主系列星として星の一生の大部分のときを過ごします。星全体のおよそ9割以上を占めるのが主系列星ですが、主系列星はその表面温度(色)と明るさの間に一定の関係があります。この関係を図に表したものがHR図(Hertzsprung-Russell diagram)といいます。

3. 銀河系の外にある他の銀河などの距離を推定するのには、「脈動変光星」という星を使います。脈動変光星は、規則正しく膨らんだり縮んだりしながら明るさを変えている星で、周期が長いものほど明るく、短いものほど暗いという関係があります。変光の周期は観測からすぐにわかりますので、周期と明るさの関係から、その星の絶対等級が分かります。すると上記と同様に、絶対等級と地球からの見かけの明るさの違いから、距離を推定できます。球状星団や銀河の中の脈動変光星を観測すれば、その変光星が属している星団や銀河の距離がわかります。

4. ある種の星は、その一生の最期に大爆発を起こします。その現象は非常に明るい星がとつぜん出現したように見えるので、「超新星」と呼ばれています。超新星は銀河1個並みの明るさで輝きますので、遠方にある銀河の距離を推定する方法に使われています。

超新星にはいろいろな特徴をもったものがありますが、Ia型と呼ばれる超新星は最も明るくなった時の絶対等級がだいたい同じであるということが観測で分かっています。また、だんだんに暗くなっていく際の光度変化も分かっています。したがって、Ia型超新星爆発の見かけの明るさや光度変化を観測すれば、絶対等級との関係から距離が分かります。つまり、見かけの明るさが暗いほど遠くにある、というわけです。そして、その超新星があらわれた銀河の距離がわかるのです。

5. もっと遠い、何十億光年以上離れた天体、例えば遠い銀河までの距離を知るには、その銀河が遠ざかる速度を使います。私達の地球から見ると、宇宙が膨張しているために、遠くにある銀河ほどより速い速度で遠ざかっていることが観測から分かっています。つまり、銀河が遠ざかる速度が分かれば、その速度から距離を推定することができる、というわけです。「遠ざかっている物体から出る光の波長は長い方にずれる」という性質を使って、銀河のスペクトル線の波長のずれを観測することで速度を知ることができます。波長のずれが大きいほど速度が速いことになり、それだけ遠くにあることがわかります。