自然科学研究機構 国立天文台

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質問1-10)千年以上昔の日食について確認するには?

千年前、あるいはさらに昔に起こったはずの皆既日食や金環日食が日本で見えたかどうか、見えたとすれば日本のどこで見えたのかなどのご質問をいただくことがあります。

昔の日食がある特定の場所で見られたかどうかを計算しようとするときに問題となるのは、地球の自転速度や月の公転速度が一定ではないことです。現在は精密な観測ができるため、地球の自転速度が徐々に遅くなっていることや、月が徐々に遠ざかりつつあって、公転周期が長くなっていることを正確に把握できますが、それが千年間ずっと同じように続いていたのかどうか、はっきりとはわかっていません。海や大気を持ち、内部にはマグマや核がある地球と、月・太陽・惑星とがどのように影響を及ぼしあっているのかを千年間にわたって計算し続けることのできる精密な理論がないからです。

しかし、昔起こった天文現象を調査することによって、過去の地球が実際に自転していたときの状態と、現在の地球の自転速度が過去もずっと同じだったとしたときの状態との差の大きさは、ある程度見積もられています。差は時間にしておそらく数千秒(数十分から1時間を超えるぐらい)のオーダーであったろうと考えられていますが、昔起こった天文現象の記録は書き方が曖昧だったりすることもあって、差の正確な値はまだわかっていません。見積もられた値が千秒(約17分)以上違っている可能性もあります。

地球の自転速度を赤道上で測ると、1秒あたり0.465キロメートルの速さになります。値が千秒違っているということは、地球上での場所が数百キロメートル違っている可能性があるということを意味します。皆既日食や金環日食が幅数百キロメートルというとても狭い範囲でしか見られないのに対して、見られた場所の予測に同じく数百キロメートルの曖昧さがありますので、皆既日食や金環日食がある場所で見えた・見えないを断言することができないのです。(部分日食であれば、数千キロメートルにわたる広い範囲で見ることができますので、皆既日食や金環日食に比べると曖昧さは小さくなります。)

以上のような理由から、千年以上前の皆既日食・金環日食については、ある場所で見えたかどうかを確実にお答えすることができません。