観察時の注意事項金星の太陽面通過は、非常に珍しい現象なので、ぜひ観察してみていただきたいのですが、なにしろ昼の太陽の 観察になりますので、十分な注意が必要です。 望遠鏡や双眼鏡をつかわなくても、太陽を直視すると、その強い光と赤外線で短時間のうちに目を痛めてしまい ます。場合によっては失明してしまうことさえありますから、まずは絶対に直接目で太陽を見ないようにしてくだ さい。最も安全な観察方法は投影法と呼ばれるものです。天体望遠鏡に専用の太陽投影板をつけて、白い紙に太陽 の像を投影する方法で、多くの人が同時に観察できるメリットがあります。一方、太陽観察用に作られた減光フィ ルターを用いる方法もあります。金星の見かけの大きさ(視直径)は太陽の(視直径の30分の1もあるので、望遠鏡を 使わなくても、適切な減光フィルターを用いれば、肉眼でも金星の太陽面通過の様子を見ることができるかもしれ ません。このようなフィルターは、かつては日食観察用あるいは遮光板などの名前で市販されていましたが、現在 では安全性の問題から手に入りにくくなっています。ガラスにすすをつけてフィルター代わりにする方法もありま すが、赤外線が透過してしまう可能性があり、安全上は勧められません。[2012年5月30日追記] すすを付けたガラス板をフィルター代わりにするのは危険な観察方法です。2004年当 時は、ススをガラス板にムラなく濃く付着させることができれば、安全に観察ができると考えられていました。 しかしその後、ススをムラなく濃くガラス板に付着させることが難しいだけでなく、もしそれが可能だったとし ても、可視光線に比べて赤外線があまりカットされないことなどから、太陽を観察するのに適した方法ではない と考えられるようになりました。 時間があれば、各地の科学館や公開天文台でも観察イベントをやるところが多いようですから、そういったとこ ろで解説を聞きながら見せてもらうのが、いい方法かもしれません。また、こういった現象は天候に左右されやす いものです。天気が悪かったら、各地の公開天文台等で行っているインターネット中継を利用して楽しむのも、一 つの方法でしょう。世界的にもインターネット中継はあちこちで計画されていますから、家の中で楽しんでもいい と思います。