vsolj-news 365: Nova Sagittarii 2020 No. 3 = PNV J17580848-3005376 VSOLJニュース(365) 藤川さんがいて座に新星を発見 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp 天の川の方向に見えるいて座には、これまでも多数の新星が発見されており、 今年に入ってからだけでも2つの新星が発見されています。そのいて座の中に新 たな新星が発見されました。新星を発見したのは香川県観音寺市の藤川繁久 (ふじかわしげひさ)さんです。藤川さんは、7月16.519日(世界時; 以下同様)に 焦点距離120mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像からいて座の中に9.9 等の新天体を発見しました。この天体は千葉県の清田さんや山口県の吉本さんら によって確認されたほか、オーストラリアのJ. Seachさんによると、発見の前日 の7月15.381日にはすでに9.5等に増光していたことが報告されました。確認観測 によるとこの天体の詳細な位置は 赤経:17時 58分 08.46秒 赤緯:-30度 05分 35.8秒 (2000.0年分点) です。 7月16.97日にはこの天体の分光観測が口径10mの南アフリカ大型望遠鏡(SALT) で行なわれました。その結果、この天体のスペクトルには幅の広い水素のバルマ ー系列の輝線の他、中性酸素や1階電離した鉄、中性ナトリウムの輝線がみられ、 Hα輝線の幅は秒速4500kmにも広がっていることが分かりました。このようなス ペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが判明しました。 vsolj-obsなどに報告された観測結果によると、7月17日には10等台まで暗くな ったことが報告されました。分光観測の結果からは、新星爆発による膨張速度が 大きく、急速に減光するタイプの新星であることが示唆されます。今後の減光の 様子が注目されます。 2020年7月18日 参考文献 CBET 4813: NOVA SGR 2020 NO. 3 Aydi, E., et al., 2020, ATel #13872 新星の画像 ・吉本さん撮影 http://orange.zero.jp/k-yoshimoto/PNV_J17580848-3005376.jpg ※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開  等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典  を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、  VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利  です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が   subscribe vsolj-news  と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。  なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。 VSOLJの皆様 CBET 4826, 4827によると、以下のように最近発見された新星にGCVS名がつきました。 以後の観測報告ではGCVS名の方をお使いください。 YZ Ret: MGAB-V207 = Nova Reticuli 2020 V6567 Sgr: ASASSN-20ga = PGIR20dsv = ZTF20abdpwst = Nova Sagittarii 2020 No. 2 V6568 Sgr: PNV J17580848-3005376 = Nova Sagittarii 2020 No. 3 -- 前原裕之 (hiroyuki.maehara@nao.ac.jp)