vsolj-news 362: V670 Serpentis = Nova Serpentis 2020 = TCPJ18104219-1534184 VSOLJニュース(362) 西村さんがへび座に新星を発見 著者:前原裕之(国立天文台) 連絡先:hiroyuki.maehara@nao.ac.jp へび座はへびつかい座によって頭部と尾部に分断された星座で、へび座の尾部 は天の川の方向にあり、これまでにもいくつもの新星が発見されています。そん なへび座の中に新星が発見されました。新星を発見したのは静岡県掛川市の西村 栄男(にしむらひでお)さんです。西村さんは2月22.839日(世界時; 以下同様)に 焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラを用いて撮影した画像から、へび座の 中に12.1等の新天体を発見しました。この天体は西村さんが発見2日前の20.860日 に撮影した画像には写っておらず、発見のこの2日ほどの間に明るくなった天体 であることが分かりました。また、群馬県の小嶋さんが22.811日に撮影した画像 にも、この天体が11.8等で写っていたことが分かりました。千葉県の野口さんや 清田さんの観測によると、この天体の正確な位置は 赤経: 18時10分42.32秒 赤緯: -15度34分18.6秒 (2000.0年分点) で、赤い色をした天体であることが分かりました。 この天体の分光観測は、2月23.38日にラスカンパナス天文台の口径2.5mデュポ ン望遠鏡で、23.862日には京都大学岡山天文台の口径3.8mせいめい望遠鏡でそれ ぞれ行なわれました。この天体スペクトルにはP Cygniプロファイルを示す幅の 広い水素のバルマー系列や1階電離した鉄などの輝線がみられたことから、極大 直後の古典新星であることが判明しました。P Cygniプロファイルの吸収成分は、 輝線成分に対して秒速5000kmほど青方偏移しており、比較的速い減光を示す新星 であると考えられます。この新星は23.8日には13等ほど、24.3日には13.8等、 25.5日には14.5等と急速に減光したことが観測されました。今後の明るさの変化 が注目されます。なお、この新星にはへび座V670(V670 Ser)との変光星名が付け られましたので、観測報告をされる際にはこの名称をお使い下さい。 2020年02月26日 参考文献 CBET 4726: V670 SERPENTIS Aydi, E., et al., 2020, ATel #13517 Taguchi, K., Maehara, H., 2020, ATel #13519 新星の画像 ・野口さん撮影 http://park8.wakwak.com/~ngc/images/TCPinSer_20200223.jpg ・清田さん撮影 http://meineko.sakura.ne.jp/ccd/TCP_J18104219-1534184.jpg 新星のスペクトル ・せいめい望遠鏡(2月23.628日) https://y.nao.ac.jp/s/mgGlH0ONo7QEqDN ※この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開  等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典  を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、  VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利  です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が   subscribe vsolj-news  と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。  なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。