VSOLJ ニュース (065) はくちょう座に新星と思われる天体 著者 :山岡均(九大理) 連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp  はくちょう座に新星と思われる天体が発見されました。  三重県鈴鹿市にお住いの中村祐二さんは、7月13.651日(世界時、以下同)に 撮影された写真から、11.9等の新天体を発見されました。7月16.515日には別 の観測者によって存在が確かめられました。このときの明るさはV=11.69等で した。  報告された位置は赤経20時07分17.8秒、赤緯+36度04分44秒(2000年分点)で す。過去の画像には、この位置には21等よりも明るい天体は見られません。4" ほど南西には、ごく暗い(赤等級で19.5等ほどの)星があり、赤外線天体のカタ ログである2MASSにも記載されています(位置の末尾の数字が17.59秒、40.3秒)。  報告位置が充分に精度あるものだとすると、増光の程度から見ても新星の可 能性が高いものだと言えます。今後の分光による正体の解明が待たれるととも に、光度変化の追跡観測が非常に重要です。確認観測で、この天体はごく赤い ことが示されており、新星だとすれば星間吸収を強く受けていることが考えら れます。  なお、中村祐二さんは、1990年に彗星1990bを独立に発見されたベテランの 天体観測者です。 2001年 7月17日 ---------- VSOLJ ニュース (065') はくちょう座に新星と思われる天体(続報) 著者 :山岡均(九大理) 連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp  vsolj-news 065でご紹介したはくちょう座の天体を、埼玉県上尾市の門田健 一さんは7月17.735日(世界時)にCCDで撮影し、正確な位置を赤経20時07分 17.94秒、赤緯+36度04分37.2秒(2000年分点)と測定されました。過去のシュミッ ト望遠鏡による写真(限界等級は21等級程度)では、この位置から4"以内に天体 は見当たらず、また赤外線天体のカタログにもこの位置付近に天体はありませ ん。10等級以上の増光を示したことになります。 一方、イタリアのAsiago天文台の飯島孝さんは、この天体のスペクトルを7 月17.9日に撮影しました。スペクトルは、天体の膨張を示す広い幅の輝線と青 い側の吸収が顕著で、水素の線(Hα線)で測定された輝線の線幅(FWHM)は 950km/s、吸収線の位置は-1200km/sの速度に相当しています。これらから、こ の天体は、極大から間もない古典的な新星であろうと考えられます。今後の光 度変化などが注目されます。 2001年 7月18日