国立天文台・天文ニュース (133) 宇都宮彗星の発見  熊本県小国町の宇都宮章吾(うつのみやしょうご)さんは、口径15センチ双眼鏡による 眼視観測で、10月3日「ケフェウス座」に10.5等の彗星があることに気付きました。この 発見は洲本市の中野主一(なかのしゅいち)氏を通じて国際天文学連合に報告され、まも なく新彗星であることが確認されました。この新彗星の認識符号は C/1997 T1、通称は 宇都宮彗星です。日本人による彗星発見は、2月の小林彗星に続いて、今年になってから 2個目です。  この彗星は北天の比較的観測しやすい位置にあり、10月6日には、国立天文台三鷹キャ ンパスの口径50センチの反射望遠鏡で観測できました。その画像は下記アドレスの国立 天文台ホームページで公開されています。この前話題を集めたヘール・ボップ彗星とは 明るさでは比べものになりませんが、尾のはっきりした、なかなかいい形の彗星です。 http://www.nao.ac.jp/pio/Comets/misc/PressRel.html  これまでの観測から求めた暫定放物線軌道によりますと、この彗星は10月11日ごろに 地球に最接近しますが、そのときでも距離は約1天文単位もあり、10等より明るくはな りません 。空の良いところなら、口径10センチくらいの望遠鏡で辛うじて見える明る さです。見かけの位置はこのあと急速に南下し、来年1月末には南半球に移ります。近 日点通過は12月10日ころで、近日点距離は約1.35天文単位です。国際天文学連合回報に よる暫定軌道と、それによる予報位置はつぎのとおりです。 近日点通過時刻 = 1997 Dec.10.836 TT 近日点引数 = 96・.950 昇交点黄経 = 53・.942 (2000.0) 近日点距離 = 1.34933 AU 軌道傾斜角 = 128・.182 日付 赤経(2000.0)赤緯 地心距離 日心距離 太陽離角 明るさ 1997 時 分 度 分 AU AU 度 等 Oct. 10 21 12.89 +67 47.9 1.006 1.622 108.0 10.1 11 20 58.17 66 31.6 1.006 1.614 107.3 10.1 12 20 45.02 65 10.4 1.006 1.607 106.6 10.1 13 20 33.32 63 45.3 1.008 1.599 105.7 10.1 14 20 22.90 62 17.2 1.011 1.591 104.8 10.0 15 20 13.62 +60 46.9 1.015 1.584 103.9 10.0 16 20 5.35 59 15.2 1.019 1.577 102.9 10.0 17 19 57.96 57 42.7 1.025 1.569 101.8 10.0 18 19 51.34 56 9.9 1.032 1.562 100.7 10.0 19 19 45.41 54 37.2 1.040 1.555 99.6 10.0 20 19 40.07 +53 5.0 1.049 1.548 98.4 10.0 21 19 35.27 51 33.7 1.058 1.541 97.2 10.0 22 19 30.92 50 3.6 1.069 1.534 95.9 10.0 23 19 26.99 48 34.8 1.080 1.527 94.7 10.0 24 19 23.43 47 7.7 1.092 1.521 93.4 10.0 参照 IAUC 6751(Oct.5,1997) IAUC 6753(Oct.6,1997) 1997年10月9日         国立天文台・広報普及室