国立天文台・天文ニュース (83)     小林彗星の発見  群馬県、大泉町の小林隆男(こばやしたかお)さんは、口径41センチ反射望遠鏡によっ て1月30日、31日に行ったCCD観測から、「しし座」に一見小惑星と思われる18等の新天 体を発見しました。しかし、その後の観測を含めて求められた軌道は彗星的なものであ り、小惑星であることに疑問がもたれました。さらに観測が続けられて、この天体にコ マや尾のあることが認められ、彗星であることが確実になりました。その後、高精度に 軌道が計算された結果、この彗星は周期約26.6年の周期彗星であることがわかり、国際 天文学連合から P/1997 B1 の認識符号が与えられました。符号の P は周期彗星を表わ す記号です。なお、通称は「小林彗星」になります。  小林彗星の現在の明るさは17-18等で、北西に移動しています。非常に暗いものです から、残念ながら小望遠鏡で観望するのはむずかしいと思われます。太陽にもっとも近 づく近日点でも、太陽との距離が2天文単位以上ありますから、今後、見やすい明るさ になるとは思われません。  今までの観測から求められた軌道要素と予報位置は、IAUC 6554 によるとつぎのよう になっています。    近日点通過時刻 = 1997 Mar.4.295TT 近日点引数 = 184°.202 離 心 率 = 0.76831 昇交点黄経 = 329°.032 2000.0 近日点距離 = 2.06219 AU 軌道傾斜角 = 12°.490 長 半 径 = 8.90047 AU 平均運動 = 0.037118 周期 26.55年 日付 赤経(2000.0)赤緯 地心距離 日心距離 太陽離角 明るさ 1997 時 分 度 分 AU AU 度 等 Feb. 6 9 56.88 +15 42.4 1.101 2.081 170.9 17.2 11 9 53.77 +15 3.3 1.088 2.074 176.2 17.0 16 9 50.54 +14 22.9 1.082 2.069 177.2 16.9 21 9 47.36 +13 41.3 1.082 2.066 172.0 17.1 26 9 44.40 +12 58.7 1.088 2.063 166.5 17.2 Mar. 3 9 41.83 +12 15.3 1.099 2.062 161.1 17.4 8 9 39.76 +11 31.3 1.117 2.063 155.8 17.5 13 9 38.33 +10 46.8 1.140 2.064 150.6 17.6 なお、日本人による新彗星発見は、昨年明るくなって話題となった「百武彗星」以来  ちょうど一年ぶりのことです。 参照 IAUC 6553(Feb.4,1997) IAUC 6554(Feb.4,1997) 1997年2月6日          国立天文台・広報普及室