国立天文台・天文ニュース (112)      天王星、海王星間に新たな小惑星帯の可能性  火星軌道と木星軌道の間に多数の小惑星があることはよく知られています。また、最 近、海王星軌道の外側にカイパーベルト天体と呼ばれる小天体がつぎつぎに発見されて いることもご存じでしょう。惑星以外にこの種の天体がたくさん太陽系内に存在するの は、いまでは常識になっています。ところで、今回お知らせするのは、天王星と海王星 の軌道の間に新たな小惑星帯があるのではないかという仮説です。念のために申し添え ておきますが、この位置に現実に天体が発見されたのではありません。  カナダ、トロント大学のホーマン(Holman,Matthew J.)は、太陽から5天文単位(5AU) より遠いさまざまな位置にたくさんのテスト小天体を置き、長期間のうちにその軌道が どのように変化するかを、数値積分によって研究しました。大部分のテスト天体は惑星 に接近してはその引力によって太陽系外にはじき出されてしまいます。しかし、たくさ んの中には、長期間太陽系内に留まって生き残る天体もあります。45億年にわたる積分 の結果、太陽からの距離が 24-27AU の天体では0.3パーセントが生き残り、特に24.6AU および25.6AU付近に長期間天体が比較的安定に留まっている領域のあることがわかりま した。ここは、天王星と海王星の軌道の間に当たります。つまり、太陽系形成当時にこ の付近にあった小天体は、その0.3パーセントが現在でもこの領域に残っていてもいい はずです。  これは単に太陽、惑星の引力だけを考慮した結果ですが、衝突によって小天体が失わ れることもありますし、太陽系創生時に外惑星の位置が変化した影響、以前に存在した かもしれない別の天体の影響を受けた可能性もあります。これらの影響を正確に見積も るのは困難ですが、それらをも一応考慮に入れます。さらにカイパーベルト天体で半径 50キロメートル以上のものが7万個存在するという推定値と比較すると、同じく半径50 キロメートル以上のものが、天王星、海王星の軌道間に300個程度あってもいいという 結論に到達します。その全質量は、火星、木星軌道間にある小惑星の全質量とほぼ同じ 程度になるとホーマンは述べています。  この結論は主として数値シミュレーションによって得られた、可能性を示すものに過 ぎません。それでは、現実にこのような小天体は存在するのでしょうか、少なくとも、 これまでに発見されたものはありません。過去に、コワル(Kowal,C.T.)やジェウイット (Jewitt,D.)らによってこの種の天体の捜索がおこなわれてはいます。たとえば、ジェ ウイットらは、5.1平方度の範囲を極限等級24.2等まで捜索しました。これで、25AUの 距離なら、半径25キロメートル以上の天体を発見できるといいます。しかし、捜索範囲 から考えますと、たとえ天王星、海王星間に観測可能な小天体が300個あったとして も、捜索から見逃された可能性が大きいと考えられます。  この範囲に本当に小惑星帯があるかどうかはわかりません。それは今後の観測によっ て結論が得られる問題でしょう。仮に存在しないことがはっきりすれば、それなりに太 陽系の進化と関係付けての説明を必要とする問題になるのかもしれません。 参照 Holman,Matthew j.,Nature 387,p.785-788(1997). 1997年6月26日         国立天文台・広報普及室