七夕(たなばた)伝説は、昔の中国で生まれました。
天空でいちばんえらい神様「天帝(てんてい)」には、「織女(しょくじょ)」という娘がいました。織女は神様たちの着物の布を織る仕事をしており、天の川のほとりで毎日熱心に機(はた)を織っていました。遊びもせず、恋人もいない織女をかわいそうに思った天帝は、天の川の対岸で牛を飼っているまじめな青年「牽牛(けんぎゅう)」を織女に引き合わせ、やがて二人は結婚しました。
結婚してからというもの、二人は毎日遊んで暮らしていました。織女が機を織らなくなったので、神様たちの着物はすりきれてぼろぼろになり、牽牛が牛の世話をしなくなったので、牛はやせ細り、病気になってしまいました。
これに怒った天帝は、二人を天の川の両岸に引き離してしまいました。しかし、二人は悲しみのあまり毎日泣き暮らし、仕事になりません。かわいそうに思った天帝は、二人が毎日まじめに働くなら、年に1度、7月7日の夜に会わせてやると約束しました。
これが、現在私たちがよく知っている七夕の伝説です。
日本では織女のことを「織り姫(おりひめ)」、牽牛のことを「彦星(ひこぼし)」と呼んでいます。織り姫はこと座の1等星・ベガで、彦星はわし座の1等星・アルタイルです。夜空の暗い場所では、2つの星の間に天の川が横たわっているようすを観察することができます。
七夕伝説によると、年に1度、7月7日の夜に会うことができる織り姫と彦星ですが、実際には2つの星の間は、14.4光年ほど離れています。これは、光のスピードでも約14年半かかってしまう距離です。つまり、2人が光のスピードで移動したとしても、1年に1回会うことは、とても無理なのです。
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七夕伝説で織り姫と彦星は、天の川によって隔てられています。ギリシャ神話では、星座にもなっている英雄ヘルクレスが赤ん坊のときに、ゼウスの妻ヘラの乳房を強く吸ったために、飛び散った乳が天の川になったといわれています(英語では天の川のことをミルキー・ウェイと呼びます)。
天の川を肉眼で見ると、ぼーっとしていて川や乳、あるいは雲のように見えます。しかし、双眼鏡や望遠鏡を使って見てみると、天の川は、実はたくさんの暗い星の集まりであることがわかります。
私達の太陽系は、「銀河系」という二千億個ぐらいの恒星の大集団の中にあり、私達の太陽もその恒星のひとつです。銀河系全体は、直径約10万光年の薄い円盤のような形をしていて、私達の太陽系は、銀河系の中心から約3万光年の、円盤のほぼ中心面上に位置します。
地球から銀河系の円盤にそった方向を見ると銀河系の中の星が密集して見えます。星が密集した部分は銀河系の円盤に沿って私達のまわりを一周していて、これが、地球上からは天の川として見えるのです。ただし、天の川の一部はずっと南のほうにあるため、日本からは見ることができません。一方、円盤からそれた方向を見ると、星はあまりたくさんは見えません。

いて座を中心にした天の川
画像提供・著作権者:福島英雄
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天の川の明るさが季節によって違う理由も説明できます。天の川がいちばん明るく見えるのは、夏の夜空で南の空の低い位置にある、いて座のあたりです。実は、星が最も厚く密集している銀河系の中心が、ちょうどこのいて座の方向にあるために、天の川が明るく太く見えているのです。反対に、冬の天の川は、銀河系の外に向かう方向を見ていることになるため、それほど多くの星が見えません。そのために天の川もそれほど明るくは見えないのです。
いて座の方向を中心に天の川を撮影した写真を見ると、いびつながらも、銀河系を円盤に沿った方向から見たときの姿によく似ているのがわかるのではないでしょうか。
もともと七夕の行事は、7月7日といっても現在使われている暦ではなく、旧暦など太陰太陽暦の7月7日に行われていました。これは、月齢およそ6の月が南西の空に輝く夏の夜になります。現在の暦での7月7日は、たいてい梅雨のさなかで、なかなか星も見られません。そこで国立天文台では2001年から「伝統的七夕」の日を広く報じていくことにしました。
太陰太陽暦は、明治6年に現在の暦が採用されるよりも前の暦で、現在は公には使われていません。このため、伝統的七夕の日は、太陰太陽暦による7月7日に近い日として、以下のように定義します。
| 二十四節気の処暑(しょしょ=太陽黄経が150度になる瞬間)を含む日かそれよりも前で、 処暑に最も近い朔(さく=新月)の瞬間を含む日から数えて7日目が「伝統的七夕」の日です。 |
2012年までの伝統的七夕の日は、下記の通りです。
| 2006年 7月31日 月曜日 |
| 2007年 8月19日 日曜日 |
| 2008年 8月07日 木曜日 |
| 2009年 8月26日 水曜日 |
| 2010年 8月16日 月曜日 |
| 2011年 8月06日 土曜日 |
| 2012年 8月24日 金曜日 |
伝統的七夕の日は梅雨明け後で晴天率は高く、月は夜半前には沈み、その後は天の川がくっきりと見える観察条件となります。この機会に月や星を見上げてもらうきっかけにしてほしい、そしてできればライトダウンを実施してむだな照明を消し、夜空をよく眺められるようにしてほしい、と願っています。
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