わたしたちは天文科学専攻の第1期生です。わたしたちのころは、「ソウケンダイ?知らない。」とよく言われました。最近は、総研大の名前も天文学研究者には定着して来たようでうれしく思います。
在学当時は太陽物理学研究系に居ました。入学前年に打ち上げられた太陽観測衛星「ようこう」のデータが世界中を驚かせていたころに、まさにその渦中に居たわけです。毎日やってくるデータは、太陽の活発なようすを映す華麗な画像でした。そしてそのデータを求めて世界中から一線級の研究者がひきもきらずにやってきました。また太陽物理学に限らず、一般書や教科書に名前が出てくるような有名な研究者の方が談話会をしてくれたり、講義をしてくれていたのも覚えています。過剰なほどに刺激的な毎日だったのを覚えています。 同期も、さまざまな大学の、いろいろな分野からの、幅広い年齢層の、いい意味での寄せ集めで個性的な人達が集まっていたと思います。わたし自身工学部出身で、入学当初は天文学については素人だったのですが、まわりの友人達とともに学んだかいあって何とかなりました。
総研大の魅力は、「求めるものがそこにある」ということかと思います。とにかく最先端の天文学の、ありとあらゆる分野の、研究グループが、データが、観測機器が、友人達が、すぐそこにある。あとはがっちりかじり付けば、、、将来が開けるかもしれません。
子供の頃の夢は南部博士(ガッチャマン)のような学者になることで、小学校の卒業アルバムの「30年後の私」というページにも「学者」と書きました。ところが院試に失敗して電子機器メーカに就職することになり、学者になる夢から遠のいてしまいました。しかし、夢を捨てたと後悔をしたくなくて院試に再挑戦し、6年間務めた会社を辞めて大学に戻りました。修士課程修了の半年くらい前に国立天文台に新しく総研大の博士課程後期の専攻が創設されると聞き、ダメもとで受けたところ受入れていただきました。当時は英語の試験が無かったもんで・・・(笑)。
入学当初は理学と工学の文化の違いに戸惑いましたが、様々な背景と持論を持った個性的な教官や院生とともに最新の天文学に浸って過ごした3年間はとても刺激的でした。私は今、8.2mすばる望遠鏡用の回折格子や宇宙望遠鏡用の超軽量ミラー等を開発しています。また、系外地球型惑星探査計画のワーキンググループ等にも参加させていただいております。「30年後の私」を実現してくれた総研大と国立天文台に感謝!
天文学を学ぶことができる大学院は随分多くなりました。そんな中で,総研大ならではの特色とは何でしょうか。私自身の経験を振り返ると,それは学生の自主性を最大限尊重することだと思います。私は学生時代から惑星系形成について観測的手法で迫りたいと希望していましたが,当時はそのような研究ができそうなことがようやく判りつつあった段階でした。自主性を最大限に認めてもらったからこそ,そんな状況下でもこのテーマに存分に取り組めたのだと思います。また天文台には様々な分野で活躍する専門家が揃っていますから,少し積極的になりさえすれば,理論や他波長観測といった別手法からの有益なアドバイスを受けられます。もちろん,自主性が尊重されればより大きな責任を負うことになりますし,自らを見失ってしまう危険も全く無いとはいえません。しかし明確な目標がある人にとっては,大きな可能性に向かって本当のチャレンジができる場ではないかと思います。
自分と異なる分野を研究する人との距離。これが最短の大学院が総研大です。観測をメインとする『観測屋』から、計算によりアプローチする『理論屋』まで、国立天文台に基盤を置く天文科学専攻にはさまざまな専門分野のスタッフや学生が集まります。総研大本部が中心となって企画する研究会や国際シンポジウムに参加すれば、国内外トップクラスの研究者や他専攻の学生との交流もできるのです。 ところが、大学院博士課程を修了しても、研究所や大学等の研究職に就くのは難しいのが現実です。このような時代に求められる研究者──それは奇抜なアイデアと柔軟な発想を持ち、自分の専門だけでなく他の分野の知識も備えた人。総研大での学生生活は、高度な専門性と幅広い学識を備える研究者を目指す皆さんの糧となることでしょう。
修士課程までは物理学に属していましたが、それまでも頻繁なご議論を頂いていた谷川清隆氏のもとで、総研大生として三体問題を研究しました。課程修了後は通信総合研究所(現、NICT)に入所し、通信衛星群を形成維持させる将来ミッションに対して、仮想的に衛星間相互作用を加えるような軌道制御を研究しました。 2004年は文部科学省在外研究員として英国へ。欧州で議論を重ねた制御工学研究者のなかには、三体問題・銀河動力学の研究もしている人が少なからずいて励みになりました。帰国後は、制御工学と力学との分野間の相互作用ができそうだという思いに駆られ、再び谷川さんと議論をしています。また、衛星通信用ですが電波工学と軌道力学との融合分野を研究する準備を始めています。総研大に在籍していた頃は私にとって新分野であった天文学の勉強や学位論文執筆で息が切れていたかもしれません。今、総合研究の意義を実感しています。総研大で得た知見・経験が複合分野への挑戦を可能にしています。総研大や国立天文台のゼミなどで作成した、あるいは配られた資料を見直す機会が増えてきました。
私が総研大に入学した頃は、太陽物理学では太陽観測衛星「ようこう」が活躍して いた時期でした。このような最先端の観測装置の観測データを使って研究できること が総研大の良いところです。ただし、観測装置の傍に居るということは、その装置の お世話の仕事もまわってくるということです。当時、私は「ようこう」データ解析計 算機システムの管理の手伝いをしていました。最先端の観測装置が解析できるところ ですから、海外から多くの研究者がやってきます。その研究者達も、もちろんデータ 解析の計算機を使うので、研究者のデータ解析のお手伝いもずいぶんしました。当時 は大変でしたが、そのおかげで世界中の研究者に顔・名前を覚えてもらい、国際研究 集会に行っても必ず顔見知りが居るようになりました。このような海外の研究者との 交流は、現在の研究活動に非常に役立っています。なかなか親交を持つのが難しい海 外の研究者と簡単に交流を持てるのも、総研大で学ぶ大きな利点だと思います。
2001年に総研大を修了した寺家孝明です。総研大の天文科学専攻に居ましたが、実は、専門は宇宙測地学です。天文学専攻で取得できる学位には、理学、工学と学術があります。これは、これから総研大で研究される方にとっては、自分の研究の適正に応じて取得する学位を選択できると言うことですよね。今はハードウェアもソフトウェアも大掛かりになり、様々な専門分野や能力を有する研究者や技術者が集まって一つの科学を作り上げています。この様な状況の中で科学研究に身を投じるに際し、自分が持つ適正をどのように寄与させるか、能力を伸ばしていくか、新たな分野として切り開いていくか、そう言った学術へのアプローチに対しての方針にかなりの自由度を得ることが出来ると考えてよいでしょう。だからこそ、私の様に天文学からは異能なる存在も有り得るわけです。この様に研究分野に対する受け入れ間口の広さが、総研大の魅力の一つと言えるでしょう。
夢と熱意と素質を持ち合わせた博士課程の学生ならば誰しも、限られた在学期間の中で途方もない労力を研究活動に注ぎ込みますが、学生を取り巻く環境は、その努力の集積を成果につなげる効率に大きな影響を与えます。総研大の天文科学専攻を構成する国立天文台には、高度な研究環境と豊富な知的・物的資源が揃っています。太陽系から宇宙論まで様々な対象を研究する理論・観測天文学のスタッフと大学院生が多数おり、日々活発な議論と情報交換をしています。セミナーや談話会が頻繁に催され、国内外の優れた研究者が訪れては最新の研究情報を置いていきます。総研大の学生は、このような環境に身を置き自分のやりたい研究を存分に進めることができます。何か外的な理由で自分の研究活動が制限されるという事態はほとんど起こらないでしょう。
宇宙に対する自分の興味、自分は何が好きで何をやりたいのかを、常に意識し続けることは大切だと思います。研究において最終的に頼りになるのは、自分の意思と努力と、自然に対する愛情だけです。博士課程を目指す皆さんは、あえて厳しい選択肢を選ぶ理由についてよく悩んでおくことをお勧めします。常勤の研究職に就ける可能性がゼロに近い現実があるので、「天文学者としての就職」を至上命題に設定する人の大部分は必ず挫折します。大切なのは真剣に研究と取り組む過程の中で自分が成長したり、自分の人生が豊かになることだと思います。そのためにも、自分の専門を深く掘り下げると同時に、学問や社会全体の中での位置づけを常に確認することが重要だと思います。
国立天文台にはさまざまな観測所と観測機器があり、国立天文台に在籍している総研大生はこれらを使って自分の研究を進めることができます。私の場合、太陽の研究をしているので、三鷹の太陽フレア望遠鏡(写真)や長野県 乗鞍岳にある乗鞍観測所(標高2876 m)のデータを使っています。実際に観測所に赴き、自分で望遠鏡を動かして観測、解析できるところが総研大の特徴だと思います。
総研大の学生への研究費補助は、他大学に比べて、かなり充実していると思います。年2回行われる日本天文学会やその他の研究会への旅費は全額補助してもらえます(総研大に来る前は、全て自費で参加していました)。またリサーチアシスタント(RA)制度というものがあります。これは研究室での装置開発や観測、計算機の維持管理や外国人来訪者の対応などの仕事に対して給与が支払われる制度です。これで年間授業料を補えるくらいの額が支給されます。さらに育英会の奨学金も、申請すれば受けることができます。これらの補助によりアルバイトなどに時間を取られずに研究できることは、非常に重要なことだと思います。
上記の補助に加えて、海外の学会に参加するときには海外渡航支援補助を受けることができます(平成16年度に新設されました)。これにより、多くの総研大生が海外の学会で発表しました。私もこの補助を受けて、平成16年の7月にパリで行われた学会に参加しました。
「カンちがい」って人生最大のパワーだね!
「そうだよ。」
1992年末、深夜ラジオの音楽ヒットチャート。コタツでウトウトしながらも、アーティストの声に即答した。中学生だった。将来は宇宙飛行士、これしかない。興味は仕事につなげましょう。アテ、コネ、実力なんて関係なし。気持ちの昂りが、宇宙科学を人生設計の射程距離にまで近づける。「卒業文集・将来の夢」をマジメに書くなんて照れくさい、10年後の自分なんて想像できませんよ。昼間の道徳授業、担任には言い訳をしながらも、志を固く心に決めていた。
新撰組のふるさと・調布市を南北に縦断する小さな通りに、日本天文学の聖地とよばれる国立天文台がある。そこには総研大生や他大学の院生が所属しており、知の最前線を目指してお互いに切磋琢磨している。研究テーマは多種多様、自分がトップだと誰もが自信に満ち溢れている。でも、知ってる? 聖地で大評判の「ながれ星」って。今までそんな研究はなかったよね。2001、2002年に大出現し、社会現象となった「しし座流星群」は記憶に新しい。彗星や小惑星などの始原天体を起源とするダストが、地球に降り注いで引き起こされる流星群。彼らの一瞬の輝きには、太陽系創世時の壮大なドラマが秘められているのだ。アメリカ航空宇宙局(NASA)は、新時代・始原天体探査としてすぐに着目。世界初となる、航空機からのしし座流星観測ミッション・Leonid MACを打ち出した。2002年、世界中の流星研究者は緊急招集。総研大生・春日も中心メンバーとして、専用航空機(FISTA)に搭乗した。
限りなく宇宙に近い場所から観た「ながれ星」。無数の閃光が夜空に映える。ひとつひとつが奇跡だ。彼らはとおい昔に太陽系の果てで生まれ、この地球までやってきたんだね。まばたきよりも短い時間に、奇跡が繰り返されていく。眩い光に照らしだされ、心が宇宙に写りこむ。中学時代に抱いた願いは、少し違った形でかなえられたようだ。どこかで勝手に走り始めた「カンちがい」は、「昂る気持ち」を糧に熱く燃えはじめ、根拠のない絶大なる自信を確立、爆発的な行動を促し、ついには「奇跡」との出会いをもたらした。そして現在、「ながれ星」というカリスマ天文学の最先端を突き進む上で、大きな支えとなっている。チョットやり過ぎな人生は、今後も厳しい嵐をよぶだろう。必ず克服するけどね。また恩師に年賀状でも書こうかな。10年後の自分は想像をはるかに超えました、って。年の暮れに。あったかいコタツで。
平成15年度、16年度の総研大研究奨励費、平成16年度の総研大海外研究渡航費を受ける。NASA国際航空機しし座流星観測ミッション(Leonid MAC)に関しては、ホームページhttp://leonid.arc.nasa.gov/を参照。
私は理論研究部で星間現象を磁気流体力学数値シミュレーションによって 研究しています。特に、数値シミュレーションを行うための強力なツールである 「スーパーコンピュータVPP5000」を利用して、 計算精度や時間の面において通常の計算機環境では扱うことができない 大規模な計算に取り組んでいます。
研究生活は人それぞれですが、私は台内で行われている数多くのゼミや講習会を通じて天体物理や数値計算の基礎を学び、指導教官と研究課題についての議論を重ねて研究を進めています。さらに、研究会や国際会議での研究発表を通じて新たな視点やテーマを見つけ、海外の大学も含めた他大学の研究者との共同研究にも取り組んでいます。
一方で、国立天文台は国内外からのさまざまな研究者や大学院生が集まる共同利用研究機関であることから、セミナーや談話会などを通じて最先端の研究成果にふれることができ、いつも大きな刺激を受けています。私にとって国立天文台は研究者としてのあらゆる素養を身につけることができるシャワールームのようなものです。