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電波天文学系講座

電波天文学系講座では、電波天文学の最先端の研究計画に参画することで、一般の大学では経験することのできない大規模科学研究計画の一翼を担う研究活動を行うことができる。開発研究を通して観測装置についての理解を深めるとともに、その計画が目指している科学的な達成目標を学習することで、最先端電波天文学、惑星物理学についての知識を習得する。

また、すでに稼動している大型観測装置を利用して観測を実施し、電波天文学、電波位置天文学、地球物理学上の科学的な探求を行う。これらの研究活動を通して、観測技術を習得しつつ、新天体現象の発見や理論天文学と連携した実証研究も進める。

(1)最先端の電波天文研究計画とその内容

ALMA計画

南米アタカマ高原に建設を予定しているミリ波・サブミリ波電波干渉計
南米アタカマ高原に建設を予定しているミリ波・サブミリ波電波干渉計。日米欧が協力して建設を進めている。

ALMA (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array) は、日本・北アメリカ・ヨーロッパの3極の国際協力により実現される巨大な電波望遠鏡である。口径12mの超高精度アンテナ64台と小口径のアンテナ群に高感度のミリ波サブミリ波受信機 (周波数30GHzのミリ波から950GHzのサブミリ波) をそれぞれ搭載し、受信信号を超高速デジタル分光相関器で解析し、また電波画像を現像する機能を持つ大型計算機を導入して、サブミリ波帯での本格的な観測を実現する。これらの観測システムを海外の観測最適地であるチリ北部の高地に設置し、アンテナを最大14kmの範囲に配置することにより、口径14km相当の巨大なミリ波サブミリ波望遠鏡を合成し、これによりハッブル宇宙望遠鏡を凌ぐ0.01秒角という分解能と、口径100mの望遠鏡に相当する集光力の実現を目指している。本計画は、惑星地球科学、星間化学、素粒子物理学、相対論的な量子電磁気学など、多くの隣接学問分野と密接な関係を持ち、まさしく総合研究大学院大学の特色を活かした学習と研究が行える。

RISE計画

打ち上げる人工衛星のイメージ図
月を周回する2個の人工衛星の軌道を精密に計測することで、月の裏側も含めた月重力場の精密計測を行う。2006年の打ち上げを目指し搭載機器の開発が進められている。

RISE計画は測地学的手法、すなわち重力、形状、回転運動の観測により月の内部構造とその進化の解明を目指している。2007年に日本が打ち上げる月探査衛星SELENEに搭載したレーザー高度計による月表面地形の計測、VLBI用衛星とリレー衛星を併用した世界初の表裏両面の月重力場計測、およびこれらを組み合わせた月全面重力異常決定により月内部構造の解明に挑む。平成18年度入学の学生は在学中に最先端のデータが取得され、多くの初期成果が期待される時期にあたる。地球・月・惑星の内部構造と進化の研究に意欲をもつ学生を期待する。

スペースVLBI計画

活動銀河中心核に存在すると考えられている超巨大ブラックホール(SMBH)の模式図
活動銀河中心核に超巨大ブラックホール (SMBH)が存在すると考えられている。SMBHの周囲にはその強力な重力で引き寄せられたガスが降着円盤を形成し、円盤と垂直方向にジェットを吹き出している。図はその模式図で、ジェットの生成・加速機構の一つとして考えられている磁力線も示している。(NASA/ESO提供)

 非常に遠方でコンパクトな銀河中心核領域を、スペースVLBIで実現する最高の空間分解能で観測し、銀河の中心核の超巨大ブラックホールおよび周辺の降着円盤などで発生している高エネルギー物理現象を解明する。このため、直径10mの電波望遠鏡を宇宙空間に打ち上げ、地上の電波望遠鏡と連携して観測を行うスペースVLBI計画を推進している。

(2)既存観測所の施設概要及び科学的な達成目標

野辺山宇宙電波観測所

野辺山宇宙電波観測所45m電波望遠鏡の写真
45m電波望遠鏡
野辺山宇宙電波観測所45m電波望遠鏡は82年の完成以来、国内外の天文学者により最先端の天文観測に利用されてきた。世界最大のミリ波単一鏡であり、これまでに『ブラックホールの発見』などの大きな成果をあげてきたが現在も第一線で活躍している。
チリ高地に所有しているサブミリ波10m望遠鏡(ASTE)の写真
ASTE望遠鏡
野辺山宇宙電波観測所はチリ高地にもサブミリ波10m望遠鏡(ASTE)を所有している。最近観測を開始したがすでに様々な科学的成果をあげつつある。

野辺山宇宙電波観測所は星生成領域や銀河などの電波天文学の観測的研究やその観測を可能にする観測装置(アンテナ、受信機など)の開発的研究を主体的に実行できる研究者を育てるためゼミはもちろん、オンザジョブ型トレーニングも実施している。望遠鏡のかたわらで実地体験をしながら電波天文学が学べるある意味で最高の場所であると自負しています。物理学、化学などの基礎をしっかり学んだ意欲ある若者の参加を希望します。

野辺山太陽電波観測所

野辺山電波ヘリオグラフの写真
野辺山電波ヘリオグラフ
100ミリ秒毎に連続して太陽全面の電波画像を撮影できる太陽観測専用電波望遠鏡。世界唯一の装置であり、世界中の研究者の共同利用に供されています。太陽表面で発生する、爆発現象の観測を行っています。

野辺山太陽電波観測所では、ヘリオグラフおよび太陽観測衛星によるX線や紫外線等のデータを解析することによって、太陽の活動現象を研究している。物理学を背景に、既存の概念にとらわれない太陽物理学の研究をめざす学生を期待する。

VERA観測所

VERA観測所配置図
水沢、鹿児島、小笠原父島、石垣島の各地に直径20mの2ビーム電波望遠鏡を配備して、超高精度の電波位置天文観測を行っている。1年間に変化する天体の位置を精密に計測することで、その天体までの距離を計測する。距離が計測できると我々の銀河系内における天体の3次元的な位置が明らかになり、銀河の回転運動や質量分布などを明らかにすることができる。

 VERA観測所では、世界で初めて開発された2ビーム電波望遠鏡4基を日本国内に配備し、電波位置天文観測を実施している。この観測研究が目指す科学的な主要目標は、銀河のダイナミクスを明らかにすることであるが、メーザー天体の物理や地球物理学、大気科学など幅広い学問分野とも密接に関連している。また、観測装置も世界一級の装置であり、高度な工学的研究の成果も取り入れている。日本各地の電波望遠鏡を超高速通信回線で結合する光結合型電波干渉計の研究も進めている。学生の関心と興味に従って幅広い学問領域の研究が可能であるばかりでなく、さまざまなキャリア形成が可能である。

水沢観測所

20m電波望遠鏡、10m電波望遠鏡、実験用3mアンテナの写真
水沢観測所には写真に示す20m電波望遠鏡、10m電波望遠鏡、実験用3mアンテナの他に、超伝導重力計や地球潮汐観測施設、天文時系保持のための原子時計などを有し、VERA観測所プロジェクト、RISEプロジェクト、地球物理研究を協力にサポートしています。

水沢観測所では惑星(地球を含む)・月の測地学的手法を用いた研究を行っている。即ち、対象の形状、重力、自転の変動から、目に見えない内部構造を知り進化を解明しようというものである。現在進行中のプロジェクトとしては月探査衛星により月の内部構造を究明するRISE計画、及び世界に展開した超伝導重力計ネットワークにより地球中心核内の運動を究明するGGP計画がある。さらに、RISE後の月及び惑星探査の基礎研究も行っている。器機開発、データ解析、理論を問わず、これらに関心をもち、広く地球・月・惑星物理学の研究を行う学生を求めている。